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 人類学が利用してきた手法で,フィールド・ワークに基づいて社会の様子を定性的に記述しようというもの。学術的に厳密な方法論がある。

 近年,電機メーカーなどで,商品開発時のユーザー調査に民族誌学の手法を応用する動きが広がっている。従来の「定量的」な調査では限界があると考えるようになったからである。これまで,多くの企業が主に頼ってきたのは,アンケート調査の結果を統計的にまとめるといった,結果を数値で表現する方法である。こうした方法は,ユーザーの現状を定量的に把握する目的には向いているが,背後にあるユーザーの意識や理由については,推測の域を出ないことがほとんどだ。そのため解釈する人物の考え次第で結論が大きく変わり得る。

 対して民族誌学に基づく調査は,ユーザーの行動を現場で観察したりインタビューを繰り返したりする。ユーザーの意識や理由を一歩踏み込んで明らかにしたい場合に向く。各社の民族誌学の応用例は,企業の戦略策定から個別の製品の改良まで多岐にわたっている。調査を実施すると,ユーザーが何を望んでいるのかが鮮明に分かるため,仕様の策定で迷いが減るといった効果もある。

 なお,企業が利用している方法の多くは学問的に厳密ではないため,「民族誌学に影響を受けた手法」と呼ぶこともある。

民族誌学の調査は現場での観察を重視する手法である。ただし,観察の結果を戦略の立案や製品開発に生かすには,周到な準備や結果の分析,結果を周知する努力などが欠かせない。
民族誌学の調査は現場での観察を重視する手法である。ただし,観察の結果を戦略の立案や製品開発に生かすには,周到な準備や結果の分析,結果を周知する努力などが欠かせない。 (画像のクリックで拡大)