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MEMS特有の立体構造を作るためには,さまざまなプロセスが利用されるため,使われるレジストの種類も多い。用途に合ったレジストの選択が重要である。

 MEMSの作り方は,集積回路の技術を発展させて,Si(シリコン)などの材料を立体的に加工するというのが基本である。集積回路はフォトソリグラフィでマスクのパターンを一括転写して作る。MEMSも基本的には同じだが,レジストにパターンを転写した後,深くエッチングして立体的な構造にしたり,もしくはこのレジストを鋳型にしてメッキで構造体を作ったりする(図1)。レジストはいろいろな種類を使い分けている。私たちが使っているレジストを表1に示した。

図1 フォトリソグラフィとマイクロマシニング
図1 フォトリソグラフィとマイクロマシニング

 MEMSでは,粘度が高くて厚く塗れるレジストや,メッキ用のもの,ガラス加工のサンドブラストに使えるレジストなど,半導体LSI用とは違った特性のものをいろいろ使う。

 例えば,SU-8というレジストは,幅5μmで厚さ50μm,つまりアスペクト比が10ぐらいのレジスト・パターンが作れる。厚さ2~3mmという厚いレジスト膜を作るときにもよく使うし,X線露光では従来のアクリル系のものより100倍ぐらい感度が高いといわれている。

 SU-8は加工後,そのまま残しておく永久レジストとして使える。後で取ってしまいたい場合には,KMPRという剥離型のレジストを使う。KMPRを鋳型にしてNi(ニッケル)をメッキし,後でレジストを剥離すると,Niの構造体だけが残る。

 MEMSで使うレジストには,昔は応力が強すぎて構造体が割れるとかはがれるといった問題があったが,今はだいぶ改良されてきた。ただし,レジストの使い方を間違えると,材料の持つ特性が得られないので注意が要る。

 これはMEMSに限らず,半導体プロセス全体に共通のことだが,レジストには寿命があるので,冷蔵庫に入れてきちんと管理することが大切である。そして,冷蔵庫から出したら,すぐにフタを開けず,室温になるまで待つこと。結露によって水が混入しないようにする。

 また,レジストの塗布は,ウエーハを炉から出してすぐに行う。ウエーハ表面がシロキサン構造で覆われている間に塗布するのが大切で,しばらくすると空気中の水が吸着してシラノール構造に変化するが,この状態でレジストを塗ると密着性が悪く,はがれてしまう。

図2 スピンナによるレジストのコーティング
図2 スピンナによるレジストのコーティング

 レジストは半導体と同じようにスピンナで塗るが,MEMSの場合には粘性の高い特殊なレジストを使い,厚く塗ることが多い。スピンナで回している途中でレジストが乾燥してしまうと,端の方が盛り上がったまま固まってしまう。そのため,スーパーマーケットなどで売っているポリエチレン性のフタ付き容器を用いて,フタをして回すことでレジストの乾燥を防ぐ工夫をしている(図2)。

表1 MEMSプロセスに利用するレジスト
名前 仕様 メーカー 特徴
OMR-83 ポジ 東京応化工業 一般フォトリソグラフィ用
OMR-83 ポジ東京応化工業一般フォトリソグラフィ用
TSMR-V90 ポジ東京応化工業高解像度
SU-8 3000 ネガ,厚膜化薬マイクロケム超厚塗り,垂直側壁,エポキシ系,化学増幅型,i線
KMPR ネガ,厚膜化薬マイクロケム同上,+剥離可
TMMR S2000 ネガ,厚膜東京応化工業超厚塗り,垂直側壁,エポキシ系,化学増幅型
THB-430N ネガ,厚膜JSR超厚塗り,垂直側壁,アクリル系,光重合型,アセトンで剥離可
AZ4903 ポジ,厚膜,メッキスイスClariant社厚塗り,厚膜メッキに適
PMER-900 ポジ,メッキ東京応化工業厚塗り可(約10μm)
オーディルTR-440 ネガ, メッキほか東京応化工業ドライ・フィルム(30μm厚)
オーディルBF-410 ネガ,サンドブラスト用東京応化工業ドライ・フィルム(100μm厚)
CRC-8200 ポジ,ポリイミド住友ベークライト高耐熱性,キュアによる収縮小
フォトニース ネガ,ポリイミド東レ高耐熱性,キュア(350℃)時収縮大
EU-20XC ネガ,電着レジストシミズカチオン型,曲面に形成可
AZ5214E イメージ・リバーサルスイスClariant社逆テーパ断面になりリフトオフに適。露光→ベーク→全面露光→現像でネガ
ZEP520 ポジ,EBレジスト日本ゼオン高解像度電子線レジスト,薄膜
SAL601 ポジ,EBレジスト米Sipley社電子線レジスト
Octavinyloctasilasesqui oxane(C16H24C12Si8ネガ,EBレジスト蒸着できる電子線レジスト,真空加熱によって現像