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 TFT液晶パネルの量産が始まった1990年代初めから,液晶パネル生産ラインは進化を続け,現在では「第10世代」と呼ばれる生産ラインが稼働している。この「世代」がガラス基板寸法を示すことから見て取れるように,液晶パネル生産ラインの進化の軸は大型基板対応にあったといえる。液晶パネルの画面サイズが大きくなると,そのままでは1枚のガラス基板から取れるパネル枚数が減少し,生産効率が落ちてしまう。製造する液晶パネルがノート・パソコン用からモニター用,テレビ用へと広がり,それとともにパネルの画面サイズが大きくなる中で,生産効率の低下を補うためにガラス基板の大型化は必須だった。言い換えると,生産ラインの基板大型化が,液晶産業の発展をけん引してきたと言える。

 TFT液晶パネルの本格的な応用はパソコンから始まった。1988年に,米IBM Corp.と東芝がパソコン向けの10.4型TFT液晶を発表したのが皮切りだ。1991年には,第1世代の320mm×400mm基板による液晶生産ラインが稼働する。シャープはこの第1世代基板から8.4型パネルを4枚取っていた。1993年には,第2世代と呼ばれる360mm×465mm基板の採用が始まった。NEC,東芝,シャープの3社が導入した。この寸法のガラス基板を使うことで,8.4型より一回り大きい9.4型パネルを4枚取れる。その後に投資を決めた日立製作所や松下電器産業(現 パナソニック),韓国Samsung Electronics Co., Ltd.などは,さらに大きな10.4型パネルを4枚取れる370mm×470mm基板を採用した。1995年末~1996年には,12.1型を6面取りできる550mm×650mm前後の基板(第3世代)の採用が相次いだ。そして,1998年には14.1型パネルを6面取りできる600mm×720mm基板ラインが稼働した。

 1998年には液晶モニターが実売で10万円を切り,液晶モニター市場が幕を開けた。1999年には,Samsung社が600mm×720mm基板ラインでモニター用17型パネルの生産を開始する。2000~2001年には680mm×880mmや730mm×920mmの第4世代へ基板寸法を拡大することで,ノート・パソコン向けより大型のモニター向け液晶パネルの生産性を向上させた。こうした取り組みによってコスト・ダウンが進み,1998年には100万台程度だった液晶モニター出荷は,2001年には1000万台,2005年には1億台を突破することになる。

 そして,液晶産業はテレビ市場開拓への挑戦を具体化させる。液晶テレビは予想を超える勢いで普及し,TFT液晶はテレビにおいて中心的な地位を確立した。その過程では,PDPやSED(Surface-conduction Electron-emitter Display)といった競合技術との激しい戦いがあったが,それを制することができたのも基板大型化による低コスト化の賜物といえる。象徴的だったのは,「液晶は20型以下」と主張したPDP陣営との競合である。液晶パネル・メーカーは真っ向から反論し,2004年にはシャープが30型台のパネルを効率よく生産できる1500mm×1800mm基板による第6世代ラインを稼働させた。その後,2000年代半ばにはシャープに加えて,韓国,台湾の液晶パネル・メーカーが第7~第8世代の液晶パネル工場に相次ぎ投資し,テレビ向けの生産量を大幅に拡大させた。現在では,第10世代ライン(基板寸法2880mm×3130mm)をシャープが稼働させている。

 今後はさらに基板大型化が進むのか。あるいは,進化の軸は変わるのか。それはどのような軸か――。将来の進化のトレンドは,現時点ではハッキリと見えていない。上述のように液晶パネル生産ラインの進化のトレンドは液晶パネルの市場開拓と密接に結びついているが,液晶テレビの普及が世界規模で進む一方で,テレビの次の有望市場が依然として明確になっていないからだ。ただ,新たなビジョンは出ている。無数のFPDを環境にさりげなく溶け込ませる「アンビエント」と,増え続けても環境に負担をかけない「グリーン」だ。この二つのビジョンを実現するための生産ラインが,将来のあるべき姿であることは間違いない。