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用語解説


カーボンナノチューブの模式図
 グラファイトのシートを丸めた構造の直径1~数十nmの円筒状物質。単層カーボン・ナノチューブ(SWNT),多層カーボン・ナノチューブの二種類に大別される。このほか,先端が動物の角のような形状をしたカーボン・ナノホーン,カップ形状のものなど多様な構造のナノ構造体が発見されている。

 カーボンナノチューブの第一の特徴は,先端が尖ったアスペクト比の高い細長い形状であること。このため,電界放出ディスプレイ(FED)の電極やトンネル顕微鏡の針として使われている。このうち,カーボンナノチューブを使ったFEDは,低消費電力,高輝度,視野角依存性がないこと,自発光であることなどを武器に,液晶ディスプレイ,PDP,SEDなどがひしめく中であるポジションを得ようとしている。

 燃料電池分野では水素貯蔵材料と電極の担持材料として使う研究が進んでいる。カーボンナノチューブはファンデルワールス力によって水素を吸着する。ただし,熱的な振動で水素が離れるために液体窒素を使って低温にしなければならない。触媒の担持材料としては,カーボンナノホーンの凝集体が角状の突起が集まって絡み合った状態であり,その中に微細な白金粒子が入り込み,均一分散が可能なことから出力アップにつながる,とされている。

 カーボンナノチューブは15nmより細くなると量子効果が発現し,半導体になるものがある。そこで,半導体ナノチューブを使ってトランジスタを作る基礎研究が行われている。既存のシリコン半導体の微細化の限界を打ち破る存在として期待されている。

供給・開発状況
2005/09/09

《供給動向》樹脂市販グレードやシートなどの供給始まる

 カーボンナノチューブを添加した樹脂コンパウンドの市販グレードの品揃えが増えてきた。例えば,三井化学は2005年4月よりカーボンナノチューブ入りの熱可塑性ポリイミドの帯電防止グレード「オーラムCNTグレード」を発売した。カーボンナノチューブの製造元は米ハイペリオン・キャタリシス・インターナショナル社であり,同社との共同開発品だ。三井化学は,耐熱性や耐摩耗性に優れた熱可塑性ポリイミド(商標名オーラム)を製造,販売しており,帯電防止性を持たせるためにカーボンナノチューブを添加するグレードを開発することにした。

 物産ナノテク研究所は,2005年2月に開催された展示会「nano tech 2005 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」で,カーボンナノチューブを利用した機能性シートを展示した。各種樹脂シートに混ぜ込むことで,半導体の搬送に使う帯電防止用トレーなどの用途を狙っている。 カーボン・ナノチューブは熱伝導率が高いために,放熱シートとしても有望だ。同社が開発したカーボン・ナノチューブの熱伝導率は2000W/m・Kと,Cu(銅)の390W/m・Kに比べて約5倍も高いという。

 カーボンナノチューブの代表的な供給メーカーを挙げておこう。最大手は,米ハイペリオン・キャタリシス・インターナショナル社で10nm径のMWNTを製造している。同社は,樹脂に混ぜたマスターバッチの形で供給するほか,樹脂メーカーとの共同開発により市販樹脂グレードも販売している。日本のカーボンナノチューブメーカーで代表的なのは,日機装(20nm径MWNT)と昭和電工(150nm径VGCF)。また,米ナノグラファイトマテリアルズは,60~80nm径のカップスタック形状のユニークな形のMWNTを製造しており,日本ではGSIクレオスが供給している。

《開発状況》液晶パネルのバックライトに使う

 カーボンナノチューブをFEDに使う検討が進む一方で,電界放出しやすいというカーボンナノチューブの特徴を液晶ディスプレイパネルのバックライトに使おうという検討が始まり,注目されている。競合が多いディスプレイに比べてむしろ有望な用途でないかとも見られている。

 最初の発表は日機装。同社はディスプレイテック21と共同で,カーボン・ナノチューブを使った液晶パネル用バックライトを開発した,と2005年1月に発表した。ディスプレイテック21は,独自の陰極構造と蛍光体材料を組み合わせたディスプレイの開発を目指すベンチャー企業。2006年度中の実用化を目指す。消費電力は,32インチ型のバックライトを構成した場合,輝度1万cd/m2で発光させたときに60Wと試算できる。この消費電力は,光源に冷陰極蛍光管(CCFL)や発光ダイオード(LED)を使う場合に比べてかなり低い。

 日機装は2006年度に実用化する際には,輝度3万cd/m2で寿命5万時間の達成を目標としている。同社は,低消費電力である点よりも高輝度である点を活かして,当初は携帯機器や車載機器など太陽光の影響を受けやすい環境で使用する製品を狙う。将来的には大型液晶テレビや照明機器といった大型品へも展開する計画である。

樹脂に添加して機械的特性を上げる

 カーボンナノチューブを樹脂の成形品に添加して,寸法安定性や圧縮強さなどの機械的特性を向上させようという検討も進んでいる。


ミヨタが成形したレンズホルダーを採用したCMOSカメラモジュール

 シチズン時計の関連会社であるミヨタ(本社長野県・御代田町)は,携帯電話用のカメラモジュールに使うレンズホルダーを,カーボンナノチューブを5質量%入れたPBT(テレブチレンテレフタレート)で成形し,2005年7月にサンプル出荷をスタートさせた(図)。カーボンナノチューブを使うことで寸法安定性が向上し,成形後の手直しなどが減った。

 カーボンナノチューブをCFRPに添加することによってCFRPの弱点の一つであった圧縮強さを向上しようという検討も始まっている。CFRPは引っ張る方向には繊維が抵抗して高い耐性を示すが,圧縮では繊維が緩んでその強度は母材が受け持つことになるために強度は低い。

 GSIクレオスが経済産業省の助成を受けて進めている検討では,同社のカップ積層型のカーボンナノチューブを使うことによって圧縮強さを25%上げる技術にめどをつけたという。その分軽量化できる。同社のカーボンナノチューブはカップの端面が外に出ているために母材とのなじみが良く,炭素繊維の繊維と繊維の間に入り込んで圧縮強さを高めていると考えられている。

 カーボンナノチューブを金属に添加して特性を向上しようという試みも始まっている。日精樹脂工業が信州大学工学部と共同で検討しているもので,「長野・上田地域知的クラスター創成事業」の一環。

 同社らはまず,カーボンナノチューブをメッキ液中に分散して電解メッキすることにより,ニッケルや亜鉛メッキ層中にカーボンナノチューブが複合化したメッキ層を開発中。これまでのところ,表面粗さの改善と熱伝導率が向上できたという成果を得た。機械的強度を持った上で高い熱伝導性が溶融される用途に活用できるのではないか,と見ている。

 さらに日精樹脂工業らは,アルミニウム合金などの軽金属にカーボンナノチューブを添加して強度を上げる試みもスタートさせた。目標はアルミ合金の引っ張り強さを鋳鉄並みにすることだ。軽量化の要求が高い自動車部品などを想定している。

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