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司令官の設置

 フロントローディングは機能部門横断の組織行動である。これには指示・命令系統を明確にするために、司令官を設置することが必要だ。具体的には、部門間の利害調整を行う、役員代行レベルの責任者を設定しなければならない。開発の進捗に当たって性能を求めようとすると品質が犠牲になる、コストを求めようとすると性能が犠牲になるといったトレードオフが発生するからだ。

 一般に、性能と品質、コストの責任部門は異なるが、これらの部門は組織上並列なことが多いため、QCDの最適化を図ることは困難だ。そこで、QCDの最適化、つまり部門間の利害調整に責任を持つ役割や組織の設置が必要になる。組織のガバナンスを考慮すると、開発、品質、原価管理の各部門の上位に設置されることが重要で、そのため、役員クラスが該当するというわけだ。現実には、役員が権限を委譲する役員代行のような、いわゆる自動車メーカーでいうところの「主査」の役割の設置が妥当だろう。この役割の設置により、部門間の利害調整、すなわちQCDの最適化を図ることができる。

戦略を進化させ続ける組織風土

 戦略に完璧なものなどない。時が経てば陳腐化する。戦いに勝ち続けるためには、戦略を進化させ続けることが重要だ。具体的には、フロントローディングを実行した後に、活動結果を振り返り、顧客の最新情報を入手する。そして、各種ロードマップや、経営へのインパクトを更新することだ。

 フロントローディングの実行中は、RFQの発行前に検討していた仕様が不十分であることによる一部の仕様変更や、スケジュールの遅延、顧客情報(開発日程、機種展開計画など)の変更など、さまざまな「事故」が起きる。そのため、自社と顧客の最新情報を元に、自社の活動を適応させる運用、具体的にはPDCAサイクルを回すことが大切だ。このPDCAサイクルを回すことが、フロントローディングをスムーズに実行して成果を出すための要諦である。これにより、稼ぎ続けることができるようになるのだ。

 しかし、今後、自動車メーカーから自動車部品メーカーへの要求はさらに高度になっていく。従来から言及されてきた通り、部品単位での調達からシステム単位での調達に切り替えていくことが予想される。それらに対応し、10年後まで確実に勝ち残るための戦い方を次回解説する。