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求められる交通システムの変革

 自動運転やモビリティーサービスによる交通システム変革が求められている理由としては、個人としての快適・利便性の向上や、個別事業者としての生産性の改善などミクロレベルの直接的なニーズと同時に、よりマクロな社会的課題・ニーズへの貢献が期待されていることが挙げられる。このマクロな社会課題解決への貢献の視点が重要になるのは、自動運転やモビリティーサービスの普及には、法改正やインフラ整備などの面で、各国政府や各地方自治体といった公共部門側の関与が不可欠であり、公共部門が積極的に関与するためには、社会的な課題解決への貢献という大義が必要になると考えられるからである(図1)。

図1 自動運転・モビリティーサービスで解決可能な社会的課題・ニーズ
図1 自動運転・モビリティーサービスで解決可能な社会的課題・ニーズ
(出所:ADL)
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 自動運転の導入による直接的な貢献が期待されるのは、「交通事故の削減」であろう。多くの自動車メーカーが自動運転に取り組む究極的な理由として、「交通死亡事故ゼロ」の実現を上げている。このことからも分かるように自動運転の最初のステップとして、緊急停止ブレーキなどの先進運転支援システム(ADAS)を含む先進安全装備の普及が急速に進みつつある。

 交通事故削減と並ぶ自動運転導入によるもう一つの期待効果としては、「交通渋滞の減少」が挙げられる。これは交通事故減少による副次的効果に加え、ADASの一種である先行車追従(アダプティブ・クルーズ・コントロール:ACC)機能を活用することで、全体として交通の流れを平準化する効果が期待できる。

 渋滞削減の結果として、新興国で深刻な問題になっている「大気汚染の軽減」や「CO2排出量の削減」にも貢献することが期待される。また、主に運輸・物流業界などの商用車市場においては、「不足する労働力(運転者)の代替」が特に期待されている。

 一方、モビリティーサービスの普及による直接的な貢献が期待されている社会的課題としては、「高齢化・過疎化に伴う交通弱者対策」がまず挙げられる。運転免許返納後の高齢者の支援や、過疎化により公共交通機関が維持できなくなった過疎地域における新しい交通システムとしての期待である。また、経済格差が社会的不安定の要因となっている欧米などの一部先進国においては、「貧困に伴う交通弱者対策」としての側面も注目されている。

 これらは需要者側の視点からのモビリティーサービスの貢献価値だが、供給者側から見ると「失業・移民に対する雇用の受け皿」として機能する面がある。また、これらの社会的課題解決の手段として、自動運転車やモビリティーサービスの普及が他の政策手段との比較論の中でコスト的に優位性があれば、「財政負担の軽減」にもつながり得る。