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各国で異なる重要度

 このように自動運転やモビリティーサービスの普及は様々な社会的課題・ニーズに直接・間接に貢献し得る。一方でこれらの社会的課題・ニーズのうち「どれが、どのくらい深刻な問題であるか」は、各国によって状況が異なる(図2)。

図2 自動運転・モビリティーサービスに関連する各国の社会ニーズ
図2 自動運転・モビリティーサービスに関連する各国の社会ニーズ
(出所:ADL分析)
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 例えば、「高齢化」やそれに伴う「労働力不足」の問題は、先進国や将来的には中国などの新興国にも共通の課題である。特に日本は人口構成上、欧州各国に対して約10年、米国に対しては約20年、中国に対しては約30年程度先行して問題が顕在化し始めている。加えて、欧米各国はこれまで移民の受け入れによって高齢化による労働力不足問題の顕在化を防いできた(ただしBrexitやトランプ政権の誕生により、今後欧米各国の移民政策が変化することで、この問題がより早く顕在化する可能性も出てきている)。

 一方で、「過疎化」が社会問題化しているのは、先進国の中でも日本だけで見られる現象である(図3)。直近20年間で見ると日本では、人口密度と人口増加率に正の相関がみられる、人口密度の高い都市部で人口増加率が高くなっているのに対して、人口密度の低い地方部では人口減少が続いているという関係にある。これに対して欧米では、人口密度と人口増加率の間に正の相関がない。米国では、緩やかな負の相関(人口密度の低い地域で人口増加率が高くなる傾向)が見られる。

図3 各国における過疎化の進行状況
図3 各国における過疎化の進行状況
(出所:ADL)
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 第二次世界大戦後の日本では、先行していた欧米諸国をキャッチアップするために、地方から東京などの都市部に人口を移動させることで、都市部への人口や産業の集積やインフラ整備を進め、経済発展を遂げてきた。新興国特有の経済駆動モデルによって成功してきたことによる反動という側面が大きい。日本にならって成長を遂げたアジア圏の新興国でも将来的には過疎化は起こる現象だが、顕在化するのはもう少し先の話である。現時点では日本固有の問題といえる。

 一方、「交通事故の削減」は各国共通の課題だが、先進国においてはシートベルト着用義務化やエアバックなどの安全装備の普及により既に減少傾向にある。最近は自動ブレーキなどのADAS装備の普及が、より即効性のある解決策になっている。また、自動運転車の普及が進めば「渋滞減少」による「大気汚染防止」や「CO2削減」などの効果も期待できる。ただし、これらの問題がより深刻化しているのは、中国やインドのような新興国である。また、これらの課題に対しては、都市部への自家用車の乗り入れ規制やパワートレーンの電動化などが、より直接的な解決策となり得る。

 実は、マクロな社会的課題・ニーズ解決のために自動運転やモビリティーサービス導入の必然性が相対的に高いのは日本なのである。日本では特に社会的な政策の一部として、これらのサービス・技術開発を進める意義が大きい。これに対して欧米では、日本で社会問題となっている高齢化による労働力不足や過疎化のような社会問題の深刻度は、(少なくとも現時点では)日本ほどには高くない。そのため、自動運転やモビリティーサービスの普及をけん引するのは、よりミクロな個人や事業者のニーズが中心とならざるを得ない。この点で日本と欧米には大きな違いがある。