機能性以外に関わる技術も特許になる

 本連載を通じた議論から、技術のコモディティ化が生じた環境下で、グローバル市場でのシェアの低下を免れるために日本企業が講じるべき事業戦略は、別付加価値訴求戦略であるといえる。具体的には、どのような知財戦略を採るべきだろうか。

 別付加価値訴求戦略で重要な点は、機能性ではなく、それ以外の付加価値を盛り込むことである。機能性とは別の付加価値のうち、最強の付加価値は低価格であるが、日本企業が価格で勝負できるケースは極めて少ない。米Apple社の「iPhone」が決して低価格ではないように、欧米企業の中でも価格を付加価値とせずに勝負している例は、枚挙にいとまがない。機能性とは別の付加価値として考えられるものとして、以下のようなものが挙がる。

[1]製品コンセプト
[2]デザイン性
[3]ヒューマンインターフェース(操作性)
[4]アフターサービス
[5]製品寿命(壊れにくさ)
[6]ローカライズ(現地ニーズに製品仕様を合わせ込むこと)
[7]他のユーザーとのネットワーキング

 これらすべてが知財権の対象外かといえば、決してそうではない。デザイン性やヒューマンインターフェースは特許や意匠権の保護対象となり得るし、ローカライズは結果として一定の機能の実装になり、特許になりやすい。ユーザーとのネットワーキングに関しても、ソフトウエア特許やビジネスモデル特許を取得できる可能性がある。

 全世界規模で展開されたApple社と韓国Samsung Electronics社の特許訴訟において、Apple社が中核的特許であると主張したのが「バウンスバック特許」である。

 この特許は、スマートフォンユーザーにはおなじみのインターフェースに関するものである。リストをスクロールして末尾まで行くといきなり止まるのではなく、いったん止まってから緩やかに逆方向に戻るという動作である。

 およそ「最先端技術」とはいいがたいこの動作が、Apple社のキラー特許として訴訟に用いられた。このことは、Apple社が機能性とは別の付加価値で勝負していることの象徴である。制度上は技術的な高度性を要件としている特許だが、現実は技術よりもマーケティングとの関係が深い。逆にいえば、マーケティングを行い、市場ニーズに応える特長(機能性とは別の付加機能)を実装し、これを特許化していくことは別付加価値訴求戦略では知財戦略の基本になる。

【技術のコモディティ環境下における基本戦略】
高性能化・高機能化とは別の付加価値で勝負する別付加価値訴求戦略を採る