社会環境の変化が技術革新を生む

 同様の例は枚挙にいとまがない。例えば、ネオジム磁石。第2回(「太陽光パネルにおけるシャープのシェア低下などの具体例」)で述べたように、1982年に発明されて以来、既に30年以上が経過しており、90年代後半に基本的な着想については必須特許の出願が尽きた。しかし、その後、含有資源の産出が中国に集中しているという事情などから、それまでネオジム磁石の製造に欠かせなかった微量元素、ディスプロシウムという微量元素の使用量を極減するという技術課題が持ち上がった。

 この技術課題の解決のために技術開発投資することで、必須特許の取得が可能になった。技術のコモディティ化に直面していたネオジム磁石は、「ディスプロシウム利用の低減」という限られた技術領域では、成熟期から導入・成長期へのさかのぼりを果たしたのである。

限られた技術領域であるが、今後の外交関係に鑑みると必須の技術課題であり、これによりネオジム磁石が技術のコモディティ化に至る時期は、10年ほど延命したとみられる。

 ハイブリッド車やネオジム磁石におけるディスプロシウム低減のような技術革新は、技術の進歩が契機になるのではなく、社会環境の変化、つまり市場由来であることが多い。「技術革新の種」を見つけるためには、技術動向に対して敏感でなければならないことは言うまでもないが、それ以上に市場動向に対する感性を磨いておく必要がある。

多くの事業が成熟期から知財ステージIII(衰退期)へと進み、ゆえに、別付加価値訴求戦略を講じざるを得なくなる中、これからの事業戦略・知財戦略は、マーケット志向と研究開発活動をより一層密着させ、その成果を知財化する発想が求められるであろう。

【再び技術力・知財力で勝負する方法】
技術革新の種を常に探し、技術力と知財力で勝負する高機能化戦略に戻す

 このような活動を行うためには、特許データベースを駆使することが必須要件になる。特許の出願件数は、研究開発投資の量とほぼ比例するため、特許データベースを駆使すれば、まだ誰も研究開発に着手していない分野を特定できる。そのような分野に市場を作っていけば、先行者利益を得られることは間違いない。