重要なことは、①「自社の技術力でアプローチ可能なマーケット(市場の開拓)」の存在です。マーケットが存在しなければ、いくら性能の良い独自製品を造ったとしても売れません。自社の技術力でアプローチ可能なマーケット(①)が見つかった場合、自力で市場開拓するためには、②「そのマーケットに適合する製品を設計・製造すること(製造力)」、③「製造した製品を市場で販売するルートを確立すること(販売力)」の2つが必要です。これらのうち、製造力(②)はそれなりの技術を保有する下請け企業であれば持っているかもしれませんが、販売力(③)は下請け時代には要求されなかった能力です。
「自力での市場開拓=下請け脱却」は、市場の開拓(①)と販売力(③)をそろえることが必須条件となりますが、下請けを続けてきた中小企業がこれらを全て自前でそろえることは容易ではありません。では、どうしたらよいのでしょうか。筆者は以下のように考えます。
[1]マーケットはありそうだが、「自社の技術力でアプローチ可能」とまでは言えない場合
→大学や他企業との技術連携や共同開発によって技術を補完する方法が考えられます。「大企業で埋もれている休眠技術を中小企業が事業化する」という、川崎市の中小企業支援、通称「川崎モデル」は、中小企業が保有する技術を大企業の技術と企画力が補完できるという好例です。
[2]独自製品の企画・製造はできたが、販路がない場合
→グローバルな販売ネットワークを保有する商社や大企業と連携することが考えられます。
なお、共同開発契約やアライアンス契約などの契約書抜きではビジネスは成立しません。従って、いずれの場合においても契約交渉など契約の巧拙が企業力に影響を及ぼします。この点については、いずれこのコラムでも取り上げたいと思いますが、今はその予告だけにとどめさせていただければと思います。