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 ここではリターンとして売り上げではなく、売り上げから得られた利益を考えます。製品Xの利益率を10%であるとして、リターンを100億×10%=10億円としてよいでしょうか。この計算は、事業利益に対する特許の寄与率が100%であるという前提になりますから、妥当とはいえません。そこで、事業利益に対する特許の寄与率が問題となりますが、これは事業によってまちまちでしょう。ただ、米国では「企業利益の源泉は、資本、組織、企業努力(労働力)、特許(技術)という4つの要素から得られるものである」という利益四分法(25 %ルール)や、「資本・営業・特許権という3つの要素から得られるものである」という利益三分法が提唱されています。これを踏まえると、事業利益に対する特許の寄与率を30%程度と考えてもよいでしょう。

 すると、特許コスト1億円に対するリターンは、事業利益10億円に30%を乗じた3億円と計算できます。このリターンは、特許による典型的なリターンであるロイヤルティー収入とは異なり、現金で計上されるものではありません。しかし、製品の売り上げの一部に特許が貢献しているという図式は成り立つのですから、特許による「無形的なリターン」と考えられます。

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 大企業の取締役会でも未だに「特許コストを毎年1億円も掛けているのに、ロイヤリティー収入はわずか1000万円に過ぎない。特許活動を事業と考えると純然たる赤字である」などといった議論があるようです。本当にそうだとしたら、特許活動などやめてしまった方がよいというのが、この議論の帰結になるでしょう。しかし、テクノロジーで勝負する企業において、歴史上、知財権をおろそかにして勝利を収めた例は極めて少ないと言えます。価格勝負をするアジア企業の中には知財権に力を入れていない企業もあると思います。しかし、現在の日本企業が価格一本で勝負できないことは明白です。

 「特許コスト対ロイヤルティー収入」という構図で特許のコスト・リターンを論じることは誤りです。ロイヤルティー収入に加えて事業参入による利益という無形的なリターンも特許コストによるリターンとして勘案しなければなりません。