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鮫島正洋=内田・鮫島法律事務所 代表パートナー 弁護士・弁理士
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鮫島正洋=内田・鮫島法律事務所 代表パートナー 弁護士・弁理士
 言うまでもなく、職務発明制度は、発明者に対価を与えることによって発明その他の知的創作活動を奨励・活性化する制度です。この趣旨の下、企業は「発明者原始帰属」と「法人原始帰属」のどちらを選択するかを判断すべきです。法人原始帰属にしたからといって、知財部における発明報償の算定の手間が大幅に削減されるわけではないこともほぼ明らかになりました。となると、法人原始帰属に移行することのメリットおよびデメリットは何であるかが判断の対象となります。これは、「企業の競争力」というレベルで検討すべき問題です。

 例えば、ある業界において、多くのライバル企業が法人原始帰属に移行する中、企業Aだけが発明者原始帰属を維持した。すると、優秀な新卒や中途入社者が企業Aに集まった。結果、企業Aのイノベーション力は飛躍的に増大し、10年後には業界の勢力地図が大きく入れ替わった──といったことも起こり得るのです。もちろん、これは発明者原始帰属か法人原始帰属かを選ぶ段階だけではなく、発明報償制度全体において貫かれるべき視点です。

 一例を挙げると、多くの企業が出願時に一定の金額を支払う「出願時報償」を導入しており、その額は特許出願1件当たり、1~3万円程度と言われています。こうしたトレンドの中で、年間100件の特許出願を行っている、年間売り上げ1000億円の企業Bが出願時報償を15万円にしたとします。すると、何が起こるでしょうか。

 まず、出願時報償経費が増加することは明らかです。3万円の出願時報償を15万円にしたのだから、1件当たりの差額は12万円。従って、100件となるとコストは1200万円増えます。しかし、「それはもったいからやめよう」というのは経営的な議論ではありません。