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 第2回では、「モビリティー革命」を起こす三つの要因のうち「パワートレーンの多様化」の点について取り上げた。これまで提供してきた「ユーザーへの価値提供」「経済産業への貢献」に加えて、真にサステナブルな産業へと転換していくために、今後の自動車産業には「社会課題の解決」が求められると述べた。今回は、二つ目の変化要因である「クルマの知能化・IoT化」に関して取り上げる。

完全自動運転車は2030年にどこまで普及するか

 現在、国内外の自動車メーカーや米Alphabet社(米Google社の持株会社)をはじめとして、ICT企業の自動運転車開発に関わる取り組みが紙面を賑わしている。2015年の報道件数は前年比で2.4倍となっており(1)、まさにホットトピックと言える。

 これだけ紙面を賑わしながら、自動運転車が世に与える影響を定量的に示した報道はまだない。本論に入る前に、「自動運転は検討に資するほどの影響をもたらす存在であるのか」について検証する。

 完全自動運転車は2030年にどれだけ普及しているだろうか。一つの目安として「新車販売台数の3%」という数字を概算する。

 2030年時点で、完全自動運転の実現に要するセンサーのコスト(主に全方位LiDARの想定コスト)は50万円を下回らない見通しだ(2)。一方、消費者調査に基づくと(3)、自動運転車に対する厳しいコスト感度が読み取れる(図1)。

図1 デロイトの消費者調査と移動距離ベースでの自動運転車のインパクト
図1 デロイトの消費者調査と移動距離ベースでの自動運転車のインパクト
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 同調査によると、50万円以上の追加コストを支払う意思がある消費者は3.3%に過ぎず、過半数は自動運転車購入に際し通常の自動車以上の追加コストを支払う意思がない。このことにより、仮に技術的・社会的な制約を乗り越えたとしても、自動運転車の普及にあたっては経済的な制約が立ちはだかる見通しである。

 一方、走行距離ベースで見ると完全自動運転車は、新車販売されるクルマの中で「30%の移動」を支える可能性を秘めている。Google社からの問い合わせに対する米運輸省の回答にもあるとおり、完全自動運転は見方を変えると「人工的なドライバー付のクルマ」と言える(4)

 完全自動運転車が現在のタクシーのように街を24時間・365日走行したと仮定した場合、自家用車の約15倍の距離の移動を賄うと推計される。この数値を掛け合わせると、台数ベースでの広がり以上に、実感値として完全自動運転車が街中の道路を瞬く間に占有することになるということだ。自動運転車は普及台数以上に世に与える影響が大きい存在であることがお分かりいただけただろうか。


(1) 日経テレコンにて、2015年と2014年1年間の日経各紙、全国紙の報道数を比較
(2) Velodyne社の全方位LIDARコストおよびADAS部品のコスト下落率よりデロイト推計
(3) 日本、デロイト実施(2014年3月)、インターネット調査、n=2075(2016/2/12)
(4) 「グーグルの自動運転車、人工知能が「運転手」 米運輸省見解」日本経済新聞