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 筆者がシリコンバレーで働いていた時、毎日のように「スケーラブル」という言葉を使ったり聞いたりしていた。投資家と起業家はスケーラブルなものに夢中である。なぜなら、「スケーラブル」は、一般的な新しいビジネスとベンチャーを見分ける指標になるからだ。

 スケーラブルとはいったい何か。その好例が、米Amazon.com社や米Google社、米Facebook社といった急速に成長したベンチャーである。こうした企業の事業は、ユーザーと収入が1、2、3、4、5、6、7と直線的に増えていったのではなく、1、2、4、8、16、32、64と倍々ゲームで爆発的に増えていった。この増え方や成長を「スケーラブル」と呼ぶ。

 スケーラブルな起業アイデアは希少なため、価値が高い。投資家は、たくさんの起業家が送ってきた事業計画の山から、スケーラブルなアイデアをダイヤモンドのように探している。スケーラブルなアイデアとそれを実現できる起業家を見つけた投資家は、起業家が投資に見合った担保を提供しなくても、積極的に投資する。

 もし仮に、Facebook社を立ち上げたばかりのMark Zuckerberg氏に対して投資家が担保を求めたら、同氏はそれを断り、担保を求めない別の投資家に出資してもらえただろう。

 これに対して、若い料理人が初めて開店するレストランに担保なしで出資する投資家が見つかることは、日本だけでなく、米国や欧州など、世界を見渡してもまずあり得ない。俗に「ベンチャー」「スタートアップ」と呼べるのは、自営業や地元の店舗のような一般の事業よりもはるかにスケーラブルな事業を行う新興企業に限る。

 本連載ではこれまで、起業における金銭面のリスクはシリコンバレーにおいて、起業家ではなく、投資家が負うものと紹介した。実はこれには前提条件がある。投資家が金銭面のリスクを負ってまで投資してくれるのは、スケーラブルなアイデアを持つ起業家だけだ。つまり、リスクなしで新しいビジネスを始めたいと思えば、自分の熱意とスキルに合うスケーラブルなアイデアを探す必要がある。新規事業のアイデア探しは決して簡単ではないが、どういうアイデアがスケーラブルであるかを理解しておいたほうがよい。本連載第2回のテーマは、このスケーラブルである。スケーラブルという概念を、前後編2回に分けて解説したい。そして、前のテーマの最後で紹介したような、スケーラブルな起業アイデアを最後に紹介する。