前編では、スケーラブルな事業を立ち上げる起業家はリスクを投資家に負ってもらえると述べた。そのスケーラブルな条件として、1.市場が大きいこと、2.収入の伸び率が経費の伸び率よりはるかに大きいことについて解説した。後編では、3番目の条件について解説し、スケーラブルな起業アイデアを紹介する。
1と2の条件を満たしたアイデアであっても、成長の途中で他社が参入し、激しい顧客の奪い合いが見込まれる場合は、成長できなくなる可能性がある。だからこそ、「競争から守られている」という条件が必要になる。
これについてFacebookを例に考えてみよう。ソーシャルネットワーク(SNS)のWebサイトを作って開業することは技術的には難しくない。実際にはたくさんの小規模のSNSサイトがユーザーを引き込もうとしている。
しかし、Facebookに完全に満足していないユーザーが、Facebookにはない機能を提供している他のSNSサイトに乗り換えるかというと、そうでもない。ユーザーの流出を防ぐのはFacebookの規模の大きさである。より大きな規模のSNSに参加すると、より多くのユーザーに自分を知ってもらうことができるし、より多くの他のユーザーと交流できるからだ。ユーザーが多ければ多いほど競争力が高まる「ネットワーク効果」を活用している。
このネットワーク効果によって、Facebookは成長すればするほど、集客力が強まると同時に、他の小さいSNSの集客力が弱まる。前編で紹介したWeb制作の事例とは対照的である。Webサイトの制作を依頼する顧客にとっては、大きなWeb制作会社が小さい会社より必ずしも魅力的ではない。SNS業界と違ってWeb制作業界では集客競争が依然として激しく、価格競争が起きているのは、そうした理由からだ。