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起業家は自分の商品を愛し過ぎる

 新しい商品には、「きちんと製造してユーザーに提供できるのか」という技術面でのリスクと、「欲しがる人はいるのか」という営業面でのリスクがある。リース氏をはじめ、シリコンバレーの技術者出身(いわゆる「理系」)の起業家の多くは、結果的に誰にも使われなかった商品の開発に長い時間を費やしてきた。彼らの悔しさは、想像に難くない。この挫折を糧として、同氏はリーンスタートアップのマニュフェストを書き、多くの起業家や投資家に納得してもらった。

 

 スタートアップが開発にいそしむ新製品の多くが、技術面よりも営業面でのリスクの方が大きい。それにもかかわらず、多くの理系の起業家は小さな実験を繰り返しながら慎重に事業を進めるよりも、自分たちが理想だと考えている製品をかたちにすることを優先してしまう。それはきっと、新しい製品を開発する方が楽しいからだろう。自分が考えた商品を「マイベイビー」と呼び、それを完璧にしようと愛情をかけて開発する起業家は少なくない。それはまるで、画家が最後の一筆を絵画に加えたり、小説家がある章をまるごと書き換えたりするように、起業家も商品が完璧になるまで開発を続けがちである。

 

 そもそも、開発という合理的で予想可能な仕事は、理系の起業家を魅了する。一方で、消費者の欲しいものを探るという予想が難しい仕事は、進んで行おうとしないのだ。結果として、自分たちで進めやすい作業、つまり開発から始めてしまう場合が多い。すると、必要以上にリスクを負うことになり、時間と費用を無駄にしてしまう。

 

 以上が、リーンスタートアップという経営哲学が生まれた背景である。次回は、リーンスタートアップの具体的な内容を紹介する。

  (英和訳協力)碇健一郎、岩﨑一徳、奥田翔平、松岡範暁