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品質の数値化から始める

 ばらつきは「範囲R」と「標準偏差σ」で数値化することができます。「範囲R」は最大値と最小値の差のことです。数あるデータの中から最大値と最小値にしか着目しないので、実力を見るには少し粗い。そこで「標準偏差σ」を用います。標準偏差は平均値に対して個々のデータがどれくらい離れているかを、全てのデータで換算します。そのため、ばらつきをつかむ際に最適です。標準偏差というと難しいイメージが先行するかもしれませんが、計算自体はシンプルです。

[1]平均値を算出する
[2]各データの平均値との差をそれぞれ2乗する(この結果を平方和という)
[3]平方和を「データ数-1」で割る(この結果を分散という)
[4]分散の平方根をとる(これが標準偏差)

 Excelシートを使えば、生データを入力した後に、数回クリックするだけで自動計算が可能です。

 例えば、量産品のデータから「標準偏差σ」を導き出すことで、その加工者の実力を把握できます。ほぼ安定した加工で正規分布を描くならば、標準偏差を3倍して「狙い値±3σ」内に99.7%の確率で加工できることが統計学的に予想できます。例えば、丸棒の加工長さを検査して「標準偏差σ」が0.05mmだったとすると、3σは0.15mmになります。すると、今後1000個加工する場合に、997個は「狙い値±0.15mm」内に入り、残りの3個はこの範囲から外れる実力であることが分かります。

 このように、標準偏差の値が小さくなるほどばらつきが小さくなり、狙い通りの加工ができることを実感できます。こうして「品質」の数値化を行い、目標値に達したら今度は「加工時間の短縮」に取り組みます。

 「数値化」というと、無機質で冷たい印象を受けます。しかし、数値化により「人」を判断するのではなく、「人のスキル」を判断するのです。これを忘れなければ、客観的に現状を把握し目標値を定めるための大変有効な手段になると私は思います。