現場力という言葉があるのに、設計力という言葉はなぜないのだろうか?──こうした疑問から、実践的な「設計力」を体系化したワールドテック代表取締役の寺倉修氏。デンソーの開発設計者として、日本初のオートワイパー用レインセンサーを開発して「レクサス」への搭載を実現するなど、20種類以上の車載用センサーやアクチュエーターを開発してきた同氏が、経験に裏打ちされた設計力の「魂」を語ります。
ワールドテック 代表取締役

デンソーで鍛えられた実践的設計論
第30回 電子制御燃料噴射システムの開発
あけましておめでとうございます。昨年(2017年)はものづくりといえば、まず不祥事が思い浮かび、暗いイメージが先行した。だが、本来ものづくりは明るく、前向きな世界のはずだ。どんどん新しい技術を開発し、魅力的な製品を世に送り出して、お客様の笑顔を実現する。やりがいのたくさん詰まった仕事である。今年初…
第29回 ルールの考え方
日経ものづくり2017年12月号の特集「品質クライシス」で、神戸製鋼所や日産自動車、SUBARUの偽装や不正が取り上げられている。この記事を読み、私は3社ともルールがおろそかになっていたのではないかとの思いに至った。今回は、ルールについて述べたい。
第28回 特別採用の考え方
世間を騒がせている神戸製鋼所の品質データの偽装報道で、「特採(トクサイ)」という言葉が出てきたので驚いた。この企業で特採がどのように扱われていたかはともかく、私は新聞記事でこの言葉を目にしたのは初めてだ。読者の多くも同様ではないだろうか。ものづくりの現場で仕事をしていたころのことが思い浮かんだ。今…
第27回 設計DRBFMの事前準備
前回のコラムで、仕事のフロントローディングの大切さを取り上げた。最近、神戸製鋼所の品質データ偽装の報道が目に付く。ただ、複数の新聞社の記事を読んでも不具合の状況がいまひとつ分からない。原因についてはなおさらだが、神戸製鋼所で問題になっている職場でもフロントローディングは普遍的な課題だろう。
第26回 開発設計段階のフロントローディング
最近、京都で仕事があってクルマで移動した。インターチェンジを降りてすぐの場所なので、インターネットで地図をちらりと見ただけで出発した。私はクルマにカーナビゲーションシステムを付けていない。ところが、インターチェンジを降りると道に迷う羽目となった。思っていた道が、一方通行で曲がれなかったからだ。日暮…
第25回 「ダントツ」への思い
「日経Automotive」の2017年10月号が届いた。そこには、クルマの自動運転化への取り組みと、ドイツVolkswagen(VW)社の排出ガス不正が大きく取り上げられていた。それぞれ独立の記事で特に関連付けはされていないが、私は両記事には共通点があると感じた。それは「ダントツ」への思いである…
第24回 「管理上の教訓」の見極め
「品質不具合は、同じ原因の繰り返しが多い」。あるメーカーの品質部門担当者はこう語った。最近、私がその企業を訪れた際に聞いた言葉だ。このメーカーは長い歴史を持つ。そのため、私が抱いた感想は「やはり、そうか」というものだった。
第23回 かつて東南アジアで再認識した「設計力」
北海道の民間企業であるインターステラテクノロジズ(本社北海道・大樹町)が、開発したロケットを2017年7月末に打ち上げた。目標高度には到達せず、「失敗」とメディアは報じた。だが、これはまさに「成功への第一歩」を踏み出したのだ。自動車部品の開発と同じで、何度か挑戦することで一歩一歩成功に近づいていく…
第22回 製品の分類と設計力の関係
米経済が「ニュー・モノポリー」(新たな寡占)に直面している。アップルやグーグル、アマゾンなどのIT企業「ビッグ5」の米市場の時価総額合計が英国の国内総生産(GDP)を越えた──。2017年7月14日付日本経済新聞がこう報じている。とにもかくにも、お客様からの支持があればこそだろう。日本の製造業で日…
第21回 車載製品の進化
キヤノン電子(本社東京)が2017年6月23日に小型人工衛星の打ち上げに成功した。拡大する宇宙市場を開拓していくのであろう。名古屋市にあるPDエアロスペースは、有人宇宙機開発に取り組んでいる。大手企業も出資しており、今後の展開が楽しみだ。共に大きなチャレンジで、こうした取り組みがあるからこそ、市場…
第20回 設計者の書類作成
そうなのだ。資料は読み手が理解できてこそ存在理由がある。職場も同じで、上司やお客様が資料の内容を理解して初めて仕事が進む。理解を促すには資料を工夫する必要がある。デザインレビュー(DR)や決裁会議、客先への報告会など職場で扱う資料は数多くあるが、ここではDRで使う資料について取り上げよう。
第19回 原価管理と設計力の関係
大手自動車メーカー7社の2017年3月期決算は、トヨタ自動車を含む3社が減益となった。トヨタ系部品メーカーも数社が減益だった。とはいえ、決算結果は過去のことで、各社は既に2018年3月期決算へ向けた取り組みをスタートさせている。製品・部品の原価管理には一層力が入るだろう。今回は「原価管理」と「設計…
第18回 要求される取り組み
品質不具合を未然に防ぐ手法の1つに「DRBFM」がある。先日、私はこの研修の講師を担当した。DRBFMの研修では受講者をグループ分けし、討議形式で進めていく。ここで、目立つグループがあった。意見を活発にぶつけ合っているのだ。よく見ると、リーダーの行動が際立っている。メンバーからの意見を積極的に取り…
第17回 「設計力」からの考察
タカタが法的整理か私的整理かで揺れている。将来に不安を覚えている協力工場は少なくないはずだ。これも間違った経営判断が引き起こした結果なのだろう。
第16回 「人と組織」の設計力
母校のソーラーカー部が「World Solar Challenge 2017(WSC2017)」に参戦することになった。オーストラリア大陸の砂漠地帯を北から南にソーラーカーで縦断するレースだ。3000kmを超える距離を走破しなければならない。そのキックオフ会に私は出席した。部員に勝ためのポイントを…
第15回 量産設計時の設計力
「『大きな夢を持ち続けよう』と書かれた額が化学メーカー帝人の一室に飾られている」──。2017年2月17日付のある新聞記事の一節だ。私は毎日、全国紙と経済紙、そして工業新聞にまで目を通している。その中で、特に目にとまったのがこの記事だった。素晴らしい言葉だと感じ、しばらく眺めていたほどだ。きっとこ…
第14回 ミネベアミツミが抱える課題
「ミネベアミツミ」が2017年1月27日に発足した。ミネベアとミツミ電機の統合会社だ。機械部品に強いミネベアと電子・通信部品に強みを持つミツミ電機が一体になることで、異なる分野を幅広く持つ事業体となった。同月28日付の日本経済新聞によれば、ミネベアミツミ社長の貝沼由久氏は、2015年の統合発表会で…
第13回 日本の設計現場のモチベーションの高さ
2017年がスタートした。この1月9日まで休みだった企業もあると聞く。まだお屠蘇(とそ)気分が抜けきれない読者もいるだろう。今回は連休にまつわる私の経験を紹介しようと思う。年初ということもあり、さらっと読んでいただきたい。
第12回 「設計力」と「現場力」の関係
2017年10月、三菱自動車が日産自動車から出資を受けた。これからは筆頭株主となった日産自動車の流儀が三菱自動車に持ち込まれる。「日産自動車はモデルチェンジのたびに生産拠点を白紙から見直す。決め手はコスト。工場間で競わせ、最も合理的な工場に生産を移す。三菱も厳しい工場間競争にさらされる」(11月2…
第11回 DRの構成要素「項目の内容」
数日前、自動車部品メーカーの人材育成担当者から、デザインレビュー(DR)に関して相談を受けた。具体的には、より効果的なDRを実現するための人材育成についてであった。