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 その証拠の1つが、一向に減らない自動車のリコールだ。国土交通省へ届けられる自動車のリコール届出数は毎年200~300件で推移している。これは、進歩した技術を持っていたとしても(厳密には潜在的に技術があったとしても)、それだけでは品質をきちんと確保できるとは限らない、ということを示唆している。限られた経営資源と時間という条件が課せられるからだ。

 すなわち、技術は品質確保の必要条件ではあるが、十分条件とはなり得ないのである。その十分条件として「設計力」があり、品質を確保するためには「設計力」を充実させなければならないのである。

 件(くだん)の燃費不正問題について、筆者は「つまるところ、潜在的な技術を顕在化し、今の仕事に適用することが大切だ。ただし、『設計力』は技術以外の多くの要素から構成されている…」などと思いを巡らしていた。すると、折しも日本経済新聞の「経営の視点」というコラムにおいて、「社内に答えあり」と題する記事が掲載された。

 その記事の趣旨は、燃費不正問題の原因は「部門間で意思疎通をしてこなかった点にあるのだろう」というものだった。仮に、事実がこの記事の指摘通りだとしたら、これぞまさに、「設計力」に問題があることの証左だ。

 この職場で「図面は誰が描くのか?」と質問すると、「それは、設計者(設計部門)だ」という答えが返ってくるに違いない。だが、本来は「全社で描く」。これが理想の姿であり、必須条件でなければならない。

 たった1個の樹脂製部品あっても、図面を描くには静的強度や、温度と強度、吸水と強度、熱劣化と強度、クリープ変形…などをきちんと考慮しなければならない。成形では、型割りや、樹脂の湯まわり、ウエルド位置などを確認する。製造面も忘れてはいけない。成形可能な公差になっているか、組み付けしやすい設計になっているか、金型費は許容できる範囲か…など、多くの知見を踏まえなければ優れた品質を確保した工業製品の図面に仕上げることはできない。

 つまり、設計以外にも、品質や生産技術、生産、調達、企画など関係する全ての部門の英知や総力を注ぎ込んで、初めて「まっとうな図面」となるのだ。従って、品質を確保した図面を出し続けるには、関係する全部門のベクトルが合っていることが大切だ。これは「設計力」の中で「部門間の調整力」に当たる。もしも、この点に問題があったとするならば、最初に述べた「やりきる力」が十分ではなかったことになり、今後この点を振り返る必要がある。

 次回以降、この「やりきる力」について解説していく。