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 今回は、知見を残す工夫について考える。残す知見とは、他の製品へも応用できる普遍的なもの(教訓)だ。それには2つある。1つは技術上の教訓、もう1つは管理上の教訓である。これらをセットで残すことがポイントだ。

 昔、自動車の吸気系製品で失敗したことがある。その製品は数年間の市場実績(以下、流動実績)があった。新機種用に引き合いが来たので、実車環境を調査して耐久評価を行った。問題は認められなかった。ところが、搭載位置が従来よりもエンジンに対して低く、この製品の内部にガソリンが浸入しやすい環境だった。流動後、しばらくすると、市場から故障品が返ってきた。調べてみると燃料が浸入し、ゴム部品が破損していた。原因は、浸入した燃料が酸化劣化し、ゴム材質の分子結合を切断したことにあった。直ちに、影響を受けない分子構造のゴム材質に変更した。

 この経験から得た技術上の教訓は、「ゴム材質の選定では、燃料の酸化劣化の影響にまで配慮すること」となる。

 一方、技術上の失敗は仕事の取り組みのまずさから起こる。この点を明らかにする知見が管理上の教訓だ。このケースでは、搭載位置が変わって燃料が浸入しやすくなったことへの検討が不十分だったことで破損を引き起こした。従って、管理上の教訓は「機種展開時の搭載環境変化による影響を十分に考察すること」となる。

 こうした技術上の教訓と管理上の教訓は、故障現象や原因、対策と併せて、図・表を使って1枚にまとめる。必要十分な情報にコンパクトにすることが大切だ。これは、読みやすく理解しやすくすることで、技術系の従業員の全てに浸透させるための工夫である。まとめた資料には、担当者にとって使いやすい仕組みも必要だ。過去のトラブル(過去トラ)集、キーワード検索、FMEA辞書など工夫のしどころである。

 先に述べた通り、品質不具合は繰り返しが多い。従って、不具合から得た教訓を今の仕事に活かすことが、品質向上の最も効果的な取り組みといえる。これは「設計力」の中の「過去の失敗事例の活用」に相当する。この貴重な教訓を残し、活かしているか、一度振り返ることが大切だ。