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ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者 寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者 寺倉 修 氏
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 国土交通省のルールが改正され、2016年6月から自動車の「後写鏡」(ミラー)は車外カメラと室内のモニターで代用できることとなった。同年6月末に名古屋市で開催された「人とくるまのテクノロジー展」でも開発品が公開された。従来のミラーと比べて雨の日に後方の状況を確かめやすいなどのメリットがある。だが、故障すると人命に関わる「重致命故障」につながる。市場投入に向け、「0(ゼロ)ppm」の重致命故障を達成する取り組みが行われるはずだ。

 一方、前回のコラムで取り上げた通り、国土交通省への自動車リコール届出の年間件数は高止まりで推移している。同年6月末にはトヨタ自動車が燃料装置の不具合でリコールを届け出た。重致命故障につながる品質不具合はなくならない。

 なぜ品質不具合をなくせないのであろうか。設計者の皆さんは、「まあいいだろう」「こんなもんだ」「過去からこうだ」と、設計を進めた経験はないだろうか。そんな経験はないという方は、品質不具合とは無縁だ。しかし、そのような設計者は少ないはずだ。めったなことはないと思って出荷すると、納入先はいとも簡単に品質不具合を見つける。運良く納入先をスルーできても、その不具合は市場で起こる。実は、ここに品質不具合の本質がある。

 私は今、机に向かってパソコンでこの原稿を作成している。上を向くと蛍光灯が目に入り、横を向くと壁と窓…。私たちの周りは物であふれている。人間は実に多くのものを造ってきた。しかし、無から造りだしたものはあるかと問うと、何もないということに驚きを持って気づく。何のことはない、私たちは地球にあったものを吸い出し、掘り出し、生えているものを伐採して、それらを加工してきたのだ。限りなく複雑・高精度な加工もあるだろう。だが、所詮私たちの周りにもともと存在するものに手を加えただけだ。

 私たちは、このもともと存在するものを自然と呼ぶ。人間は自然を加工してきたのである。つまり、ものづくり(製造業)とは「自然を加工する業」なのだ。