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 私は自動車部品の設計を数多く経験したが、常に失敗の連続だった。技術的な課題を潰していくが、最後まで残った課題はなかなか解決しなかった。仮説と検証を限りなく繰り返した。半年、1年はあっという間に過ぎた。失敗し続けた結果、偶然などあり得ないことを学んだ。 

 前回のコラムで取り上げた、車載ゴム部品の不具合経験はまさにこの例だ。変性した燃料がエーテル基を切断した。耐久評価で「問題なし」と判断して出荷したが、市場で破損した。自社内と納入先はスルーできたが、市場、すなわち自然は理論に反したものを承認しなかった。

 言い換えるとこうだ。「自然は理論で動いている。故に、自然を加工する業の取り組みは、理論に沿っていなければならない」──。

 このことが、「品質不具合の本質」であり、「設計の普遍的な課題」となる。すなわち、「図面に書かれたことは全て理論で説明できなければならない。かつ、試験・実験で理論が間違っていないことを検証できていなければならない」ということだ。

 研修で受講者に、「設計の取り組みでは、全て理論で説明し、試験・実験で検証していますか?」と聞くと、多くの場合、「もちろん、そのように取り組んでいます」と返ってくる。そこで、さらに問い掛ける。「1枚の図面に寸法が100箇所あるとします。全て理論で説明できるということは、100箇所のそれぞれの寸法値の根拠を説明できることです。例えば、10±0.05という寸法に対し、『10±0.025に厳しくしなくてよいのか?』、あるいは逆に『もっとラフな10±0.075ではいけないのか?』と聞かれたとしたら、あなたは理論と検証データでそれを説明できますか?」と。これを聞くとやっと、ことの大変さに気づく。

 簡単な自動車部品であっても10個や20個といった部品から構成される。部品図やサブアセンブリー(sub-assembly)図、仕様図、組立参考図、アセンブリー(assembly)図など枚数は多い。それらに書かれたデータは膨大だ。寸法だけでも何千箇所に上るだろう。だが、何千箇所であろうと、書いたからには理論と検証データで説明しなければならない。ところが、設計経験のある人はすぐに「そんなことは不可能だ」と気づく。品質的に重要な部位や心配な箇所は理論と試験・実験の取り組みを行う。しかし、ここだけはしっかりと検討しようと取り組んでも、やりきることは簡単ではない。ましてやその他の箇所は、「以前からこうだった」「まあこれぐらいで大丈夫」と進めることになる。

 しかし、自然はそのことを見逃さない。リコール、市場クレームというしっぺ返しで答えてくる。すなわち「自然はだませない」のである。

 これが、過去も現在も品質不具合がなくならない理由だ。品質不具合の低減は、この本質的・普遍的な課題を認識した上で取り組むことが大切である。こうした取り組みこそが、このコラムの本流を成す設計力である。

 折しも、米国の電気自動車メーカーである米Tesla Motors社の自動車が「自動走行中に死亡事故を起こした」と報じられた(注:現実には自動運転ではなく、運転支援システムを効かせた走行中)。ここで取り上げた本質的・普遍的な課題に起因していないか。原因究明と対策が待たれる。