PR
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者 寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者 寺倉 修 氏
[画像のクリックで拡大表示]

 メディアの報道などから、ものづくりは「上流指向」になりつつあると感じるのは私だけだろうか。このコラムはその上流の活動を「設計力」という切り口で取り上げている。今回は「設計力」の土台となる「設計段階の取り組み」について述べる。

 車載製品に求められる品質(車載品質)が厳しいのは当然のことである。従って、そこで用いられる設計力はその厳しさにふさわしいものでなければならない。そこで、設計力に入る前に車載品質について触れたい。

 クルマは多くの機能から成り立っている。走る、曲がる、止まるの基本機能以外にも安全、快適、利便性、環境性とさまざまな機能を併せ持っている。例えば、安全では前方のクルマに接近しすぎると自動的に減速してブレーキがかかる衝突被害軽減ブレーキ、環境ではディーゼルエンジンのコモンレールシステム…。多くの機能を併せ持ち、安全で快適な移動空間を実現している。しかし、どの機能を取り上げても、いったん故障すると暴走(Over Run)や火災(Fire Hazard)など人命に直結する、いわゆる「重致命故障」となる可能性が高い。このような故障は絶対に起こしてはならない。

 ところが、クルマはさまざまな環境で使用される。北極圏のような極寒の地もあれば、逆に炎熱の砂漠のような酷暑の地もある。最近では日本でも局地的な集中豪雨で道路が冠水し、渡河(とか)もどきの環境での走行を経験した人もいるだろう。これにより、クルマは実に多様なストレスにさらされる。温度や振動は言うまでもなく、湿度や水没、オイル浸漬、塩害、飛石、電気的ノイズなどである。

 例えば、トランスミッション内部で使用される部品は、150℃の高温に耐えなければならない場合がある。樹脂製部品をイメージしてほしい。そうすれば、この温度ストレスがいかに厳しいものかが分かるだろう。筆者の経験から言うと、100℃を越えると10℃上がるごとに2乗倍から3乗倍で設計は難しくなっていく。