これを予測するには、まず、世界の主要なメーカーのコストについて現在のコストはもちろん、過去の分まで含めて調査する。そのために、競合メーカーの製品を購入して分解調査するのだ。自動車メーカーに聞き込むことによってヒントが得られる場合もあるだろう。いずれにせよ、国内外の競合メーカーの製品を入手し、分解精査してコストを見積もるのは簡単なことではない。当然、労力も時間も要する。
こうして、得られた値を縦軸にコスト、横軸に時間(年)をとったグラフにプロットし、8年後までのコスト推移の概想カーブ(以下、コストカーブ)を描く。プロットする点が多ければコストカーブの信頼性が上がる。このコストカーブが示す8年後の値を読めば、それが予測される競合メーカーのコストとなる。ただし、この予測コストには誤差を見込まなければならない。誤差はプロットしたコストデータの数や経験などを考慮して決めることになるが、20~30%は見込むことをお勧めする。
こうして得られた「8年後のコスト予測値」が、取りも直さず、設定すべき「設計目標値」なのである。
以上をより分かりやすいイメージで伝えよう。現在、競合メーカーが5社あるとする。調査したところ、ここ数年間でコストが180円から現時点の130円まで低下しており、コストカーブは8年後に100円になると示していることが分かった。誤差として25%を見込むと、設計目標値は「75円」と計算できる──。
現在の130円に対してかなり厳しい目標値にしなければならない。「競合メーカーが130円だから、我が社は120円を目指す」という考えではとても勝てないということが、これでよく理解してもらえると思う。
このように、時間軸を考慮すると設計目標値は厳しい値となる。それでも、しっかりと受け止めなければならない。では、この厳しい目標値をいつ実現するか。当然、今だ。8年後に実現しても何の意味もない。これが世界で勝ち続ける「ダントツコスト」を実現する一歩なのである。
設計目標値の設定はこれほどまでに厳しいのだ。開発途中で競合メーカーの動向によって簡単に上書きできるようなものではない。