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コンカレント活動は「せめぎ合い」

 もし指摘がなく、図面がそのまま生産現場に流れていたら、不良品の山を築いていただろう。その結果、多大な損害をもたらし、関係者に多大な迷惑を掛けていた。量産図面は設計者にとって商品であり、検討抜けやミスがあってはならない。生産現場へ図面を出すということは、すなわちお客様へそれを出すということである。そう考えれば、決してミスが許されないということが分かる。修正すればよい、などといった甘えは許されない。私はこの時に、そのことをしっかりと学んだ。こうした経験が設計力の向上につながり、図面レベルの向上につながるのだ。

 もう1つ例を挙げよう。ある製品で設計段階からコンカレント活動を行った時のことだ。その製品は量産している製品(以下、流動品と呼ぶ)の次期型だった。この次期型製品に取り掛かった理由は、流動品の採算が悪く赤字を垂れ流していたからだった。つまり、次期型製品を投入することで挽回を狙ったのだ。

 採算悪化の大きな要因は、組み付けにくい設計にあった。そこで、次期型製品では開発の初期段階である構想設計段階から生産技術や生産(以下、製造と呼ぶ)とのコンカレント活動を開始した。このコンカレント活動は、設計と製造とのせめぎ合いとなる。設計が「良い構造」だと判断しても、製造から見れば「非常に造りづらい構造」であったりする。逆に、製造が組み付けやすさを優先すると、コストの高い設計になったりする。それでも、私たちはここで設計と製造が安易に妥協することなく議論を重ねた。このように緊張感を持って議論すると互いに成長することができる。

 そして、こうした議論を経て各部署に割り当てられた課題は、期限までに高いレベルで検討・実行されなければならない。そして、その後のフォロー会議には、その検討結果をしっかりとまとめるなど十分な準備をして臨む必要がある。報告内容のレベルが低いと再度報告することになる。会議の大小にかかわらず、この一連の取り組みは常に実行されなければならない。その結果、互いに技術的な新たな気づきや知見が生まれる。これが設計力と現場力の向上につながるのだ。