ワールドクラスの選手たちがCMに出演

 一方、テレムンド・デポルトも独自のマルチメディア・キャンペーンを実施し、同ネットワークでの全試合中継を盛んにアピールしている。

 使用しているコピーはスペイン語で「彼女たちがそれをプレーするために戦うなら、彼女たちがそれを勝つためにしようとしていることを見よう」というもの。米国代表のクリステン・プレスやアルゼンチン代表のワニア・コレア、ブラジル代表のエリカ・ドス・サントスなどワールドクラスの選手が出演するCMも放送中だ。

 さらに同ネットワークは傘下の社会的責任プラットフォームとUSサッカー協会との提携により、「全米の恵まれない地域社会の女の子たちに、財団のサッカーを基盤とした青少年育成プログラムへの無料アクセスを提供する」という目的で5万ドルの寄付も行っている。

 またアディダスやコカ・コーラ、現代自動車などFIFAのグローバルパートナーもキャンペーンを実施している。そんな中、注目されているのが公式決済サービスのパートナーであるクレジットカード会社のVisaだ。

VisaとFIFAのパートナーシップに関するVisaのWebページ
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(図:Visa)
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男女差別問題をクローズアップ

 サンフランシスコに本社を置く同社は、2019年5月6日から世界的キャンペーン「One Moment Can Change the Game」を開始した。フランス代表のウジェニー・ルソメやドイツ代表のジェニファー・マロジャン、デンマーク代表ナディア・ナディムらを「チームVisa」として起用。2016年リオ五輪の決勝戦でマロジャンが決勝ゴールを決めた瞬間や、ナディムがアフガニスタン難民としてデンマークに移住した後に地域のU15チームのメンバーに選ばれた瞬間などの映像を使用したCMを制作。テレビだけでなく、ソーシャルメディアなどでも広く配信している。

 ただ、W杯は社会的倫理も問われる大会にもなろうとしている。それは男女差別の問題だ。現地時間3月8日、米国女子代表チームがUSサッカー協会を「制度化された性差別」を行っているとして提訴したのだ。

 前回優勝した女子代表は、ロシアW杯出場を逃した男子代表よりも協会に多くの収入をもたらしている。にもかかわらず勝利に対するボーナスもW杯出場のボーナスも、その額は女子代表より男子代表の方が多い。こういったことが男女差別にあたるというのが女子代表の主張となっている。

 3月8日は国際女性デーであり、「MeToo運動」もあってより関心が高まったのは間違いない。

 しかもこの差別意識は世界の女子サッカー全体に広がりつつある。それが分かるのがテレムンド・デポルトのもう一つのコピーである。「純粋な献身!彼女たちはフットボールとワールドカップに全てを捧げる」というコピーには、「33%の選手がサッカーと他の仕事をしている。50%は賃金を受け取っていない」という一文が添えられているのだ。

 またコロンビア代表のメリッサ・オルティスも支払いとハラスメントに対するソーシャルメディア・キャンペーンを開始している。

 初戦と決勝戦のチケットが早々に完売となるなど、米国以外でも女子サッカーの人気が確実に高まるなかで始まる今大会だが、同時にこの差別問題がクローズアップされることにもなりそうだ。