近年、スポーツやコンサートなど多くの人々が集まるイベントの入場時のセキュリティーチェックを強化する流れが続いている。いわゆるテロの「ソフトターゲット」となりやすいことを考えれば当然と言える。ただ厳格化するとそれだけチェックにかかる時間が増え、長い行列ができる。それが来場者のストレスとなり、満足度を下げることにもつながっている。
この対策として、チェックの精度を高めつつ、短時間で終わる仕組みへの取り組みが盛んになっている。例えば米プロアメリカンフットボールNFLのニューヨーク・ジェッツやプロバスケットボールNBAのブルックリン・ネッツの本拠地であるバークレー・センターなどは、全米の空港で使用されている、「TSA Pre✓」というシステムを導入している。事前に個人情報を登録しておけば、チェックが簡略化されスムーズに入場できる。
MLBが全スタジアムに導入へ
そんななか注目が高まっているのがバイオメトリックス、つまり生体情報を利用したセキュリティーシステムだ。2018年7月12日、野球のメジャーリーグ(MLB)とチケット販売の米Tickets.comが生体認証プラットフォームの米Clearと、2019年から全スタジアムで生体認証チケッティングを導入することで合意したと発表した。
ClearとTickets.comが新技術を開発、来場したファンはスタジアムで紙やモバイルチケットを提示する必要がなくなる。事前にIDなどの個人情報と指紋、将来的には顔画像を登録しておけば、スタジアムのゲートに設置された端末に手を置いたり、顔を撮影すれば瞬時に入場の可否判断がされ、入場できるというものだ。
Tickets.comはMLBの子会社で、全30チーム中23チームの主要チケッティングパートナーとなっている。また今回の提携において、ClearはMLBの公式生体認証とチケッティングのパートナーである。
実はMLBが導入を決める以前に、2015年からサンフランシスコ・ジャイアンツやコロラド・ロッキーズなどMLBの9チームがClearと提携し、それぞれの本拠地にClear優先入場レーンなどを設けていた。今回はそれがリーグ全体に拡大した形である。MLBは7月に行われたオールスターゲームや秋のプレーオフでClearレーンを先行導入し、来シーズンにリーグ全体に広げるということだ。
今回の提携についてMLBのノア・ガーデンビジネス担当上級副社長は「Clearとのコラボレーションは、ファンにとって安全でシンプルでシームレスな体験を提供する、重要な新技術イニシアチブです。技術とチケット発券を統合するパートナーシップを構築することは、球場のアクセシビリティを常に向上させ、重要なセキュリティー基準を維持するという我々のコミットメントを反映しています」とコメントしている。