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 まずは、公差設計と幾何公差の関係性について押さえておきましょう。

 最近、受発注のグローバル化にともない、図面の幾何公差化が進んでいます。筆者は、「寸法公差図面を単に幾何公差化するだけでは、幾何公差の本来の効果を期待できない。逆に、測定工数が増加するなど、マイナス要素が目立つことになり得る」と主張しています。そのことを図面で証明しましょう。

 図1は、寸法公差指示の図面です。この図面で設計者が重要と考えている点は、「2つの穴(C1とC2)を基準とした、右下の波線部の形状と位置」です。例えば、この面がミラーとなっており、光の反射の方向を制御したいとき。あるいは、この面をカムが動くので、カムの軌跡を制御したい、といったケースが考えられます。

 見て分かる通り、寸法指示の矢印がたくさんあり、各要素の位置や大きさを指示しています。何より特徴は、Rに公差指示をしていることです。この図面の最大の課題は、「公差計算に必要な要素が多すぎるとともに、複雑にからみあっていて、公差計算が成り立たないこと」にあります。

図1●寸法公差指示の図面
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図1●寸法公差指示の図面

 この図1の図面を単純に幾何公差化した事例が図2です。まずは、寸法指示の矢印が少なく、スッキリした図面になっていることが分かります。また、Rに対する公差指示がなく、現実的に測定が困難なRを測定する必要がありません。太い一点鎖線で示した部分に対し、輪郭度測定によって設計理想形状に対する偏差を調べれば良いことになります。ただし、公差計算の視点では、依然としてデータムB、データムCからの重複した公差指示となっており、公差設計上にムダが見られます。

図2●寸法公差を単純に幾何公差化した図面
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図2●寸法公差を単純に幾何公差化した図面