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1つでも「ばらつき」はある

 公差設計とは、「ばらつきを考慮した設計」のことです。“ばらつき”という用語からは、同じ部品が大量にあるというイメージを持つ方も多いでしょう。例えば部品の実際の寸法値が、図面の寸法値を中心にして分布するわけです。こう考えると、1つしか造らない一品物ではばらつきも何もないのではないか、という疑問を持つはずです。

 しかし、1つだけ造った場合でもばらつきは存在します。程度の差こそあれ、加工した部品の寸法と図面に描いた寸法で差が生じるからです。この差の大きさや発生する確率が、ばらつきなのです。これを予測し、その影響を考慮した上で形状や寸法を決めたり、場合によってはばらつきをどの程度に抑えるべきかを公差として盛り込んだりするのが公差設計です。

 一品物でのばらつきも、大量生産品と同じく工程能力から予測できます。各部品における工程能力の範囲を最大限に活用し、公差に割り付けていくのが優秀な設計者です。やみくもに厳しい公差を割り付けたり、加工後の修正や組立時の調整が常に必要となるような公差を割り付けたりすることは、コストアップにつながります。ですから、自分が設計する製品を構成する部品それぞれの工程能力は正確に把握しておく必要があります。

 そのためには過去の製品の資料を調べたり、現場に足しげく通ったりして情報を得ることが重要です。もちろん、工法や材料、製造業者などが変わった場合には工程能力を見直す必要があります。それは一般的に4M(人 :Man、機械 :Machine、材料 :Material、方法 :Method)変動といわれるもので、その管理方法に関しては今後、解説したいと思います。