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デバイスを開発することの重要性

 旭鉄工のようにセンサーデバイスを自作した話を聞くと、コスト削減が目的だと感じる人が多いと思いますが、実はそれだけではありません。実は、コスト削減よりも重要なものがあります。それは、拡張性とスピードです。例えば、メーカーのデバイスを導入したとしましょう。このとき、もしも追加でイベントを取得したい、設置箇所を増やしたいといった変更が生じたら、素早く実施しなければなりません。素早く対応してくれるメーカーがあれば問題ありませんが、自社でできればもっと良いでしょう。今後、大量生産から多品種少量生産へと移行する製造業において、工場のさまざまなレベルでの拡張性やスピードは非常に大きな要求事項です。

 誤解のないように言っておきますが、メーカーのデバイスを使ってはいけないと言っているのではありません。メーカーが製造しているデバイスは、重要な工程や精密な精度を必要とする箇所には当然必要です。むしろ、Arduinoのような安価なデバイスは、これまでメーカーのデバイスではサポートしきれなかった細かい部分を補うという共存関係にあると言えます。

製造業最大の課題と自社開発の重要性

 もう1つ、自社でデバイスを開発することには重要なメリットがあります。それは、「教育」です。日本には、デバイスやソフトウエアを開発できる技術者を育成してこなかった企業が多いのです。IT企業に丸投げしてきたのではないでしょうか。日本特有の状況とも言えます。このままでは、自社のことをよく理解している開発者による、現場で活用できるシステムを実現できません。それどころか、時代の流れの速さについていけない可能性もあります。加えて、チャレンジ精神を持つ若手社員のやる気の低下と流出につながるという最悪のシナリオも想定されます。

 今、日本の企業に最も足りないのは「チャレンジ精神」だというのが、この1年間多くの企業を見てきた私の感想です。今の若い世代は不安を感じています。その不安は多少の給料アップや懇親会などで払拭できるものではありません。

 若者は「自分が所属する企業が数十年先を見据えてチャレンジを行っており、大きく成長する可能性があるか」、また「それを実現する人材に自分たちを育ててくれて、そのためのチャレンジをさせてくれる企業か」を見定めています。企業は人材不足を嘆く前に、企業の未来に対する姿勢を試されているのだという認識を持つべきです。

それでも前へ踏み出せない企業のために

 いろいろな所で今回コラムで書いた内容を話すと、ほとんどの人が納得してくれます。しかし、実際に行動に移す企業はわずかです。「日々の業務が忙しい」や「わずかなコストを掛けることすら難しい」など、さまざまな理由があると思いますが、重要なのはまず周囲に相談することです。

 優秀な経営者は難しい課題は周囲に相談することで解決の糸口が見つかることをよく理解しています。相談することを「恥」と感じる状況ではどうしようもありません。でも、実際は恥でもなんでもないのです。

 スタートを切ることが難しいのも事実です。私の経験上、とりあえず何も考えずに一歩を踏み出せば、後は思った以上に楽に進みます。そのスタートのきっかけとして、例えば社内の勉強会でもよいですし、リーダー人材にセミナーや講座を受講させるという手もあります。リーダー人材や経営者が学び、その内容を社内に共有するという「きっかけ」で社内の文化は大きく変わります。

 少なくとも私の講座では、実際にセンサーデバイスなどを製作する方法を一から体験していただきます。受講がスタートを切る「きっかけ」になるように考えて講座を企画しています。

問題解決から始めよう

 2017年は「ブラック企業」や「働き方改革」といった言葉が流行りました。日本の産業全体に少子化などの問題を背景として歪みが見えてきた年とも言えます。旭鉄工のように、企業も従業員も顧客も本当の意味で幸せをつかむことができるように、さまざまな「改善」を実施する必要があるのではないでしょうか。ITでは無理だったことも、IoTならできるかもしれません。

 時代も技術もビジネスルールも変わったことを認識し、自社の問題解決を実施するIoTから始めてみませんか? 自社の問題が解決できれば、社会の問題を解決することにも挑戦できます。

 これからの経営者が最も選んではいけない選択肢は「何もしない」ことです。