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「全体を見える化」するインダストリー4.0

編集部:今のお話ですと、従来の“見える化”で採っていた人手による手法が、ITというか、データの世界に移るだけだから恐れるに足らず、という考え方もあり得ますよね。

長島氏:そういう考え方もあります。その一方で、やっぱりマニュアルでできることって、視野でいえば“狭い”んですよ。ITだったら、どこまでだって1個の画面にいろんなことを集めて見られる。人間では絶対見られないですよ。事前の分析をして、それをまたサマリーにして、人間がパッと見て全体が分かる状態を生み出せる。そのインパクトっていうのは、決してナメてはいけないと思いますね。

 そりゃ、看板方式はすごいんですよ。データなんか見なくたって、普通にやっていれば成り立っちゃう、というのが看板方式ですから。だけどインダストリー4.0なら、よりいろいろな分析をして、天才の目の前に、より多様な問題を提示できるようになるんです。それで天才はまた考えますから、その天才の指示に従って現場が変わっていく。

桑島氏:2つの話があるんでしょうか。見える化をどうするかという話と、それに基づいた判断を誰がするかという話。長島さんのテーゼ、ある意味、日本のためのインダストリー4.0とでも言うのでしょうか、見える化をどうするかという話はあるものの、判断を集中させる必要はないのではないか、ということなのでしょうか。

長島氏:そうですね、2つの意味合いがあります。集中させると、やはり細部が分からない。最終的に、機械の手触りを持たない人が判断することになってしまう。標準的なスペックの組み合せだったら、それでも可能だと思います。けれど、現場で尖ったもの同士を組み合わせるようなことをやり始めると、恐らく、手触りのない人には組み合わせられないんです。

 あともう1つは、特に日本は、降ってきたことをやるのがあまり好きじゃない人たちがたくさんいると思うんです。少なくとも、ちょっと前までは。今はそれでもいいっていう人がだんだん増えているのかもしれないですけれど。やはり、自分で“カイゼン”して実現できたときの達成感を追う人たちが、結構多いと思っています。そこを考えると、判断はやっぱり現場が持った方がいい面もあるだろうと思っています。

編集部:データが集まってきたときに、経営者視点の人、あるいは工場長の人に加えて、現場目線の人にも、データは同じなんだけど見せ方を変えて見せれば、役に立つ。そういうことでしょうか。

長島氏:まさにその通りです。工場長に合った見せ方もあれば、各担当に合った見せ方、特定の工程だけに関しての見せ方もあると。最終的には、その見せ方で、行動が起こる、たくさんのアクションが始まるわけです。それらが集まったときに変なことにならない、っていうのが大事なんだと思いますね。なので、ITをうまく使いながら、見せ方は工夫してやっていく必要があると思います。それぞれに見せてそれぞれ勝手に動いてはダメ。前回ご紹介したように、会社として見出したい価値を社員全員が把握し、役立てられる状態にしておくことが、とても大事ではないかと思います。

桑島氏:日本って「モジュール化の流れに翻弄された」というような歴史がありますよね。インダストリー4.0のような生産のモジュール化の話と、デザイン感覚がなくても設計できるようにしてより効率化しましょうという設計のモジュール化の話があるかと思います。だから、日本の製造業にとっては、モジュール化の流れに左右されないようなところに集中することが解になるんでしょうか。

 ただ、さきほどの自動車の動きなどを見ていると、結局モジュール化できないものなんてあるのか?という疑問も出てきます。長島さんの提示されている1つの答えは、モジュール化もできないようなものに特化すべき、それはインダストリー4.0とは違う異形世界、ということなのでしょうか。

長島氏:イエスかノーか、微妙なところですね。モジュール化をどう捉えるか、ですよ。

標準のものを組み合わせることをモジュール化と言うのか。突き詰めたものを組み合わせることをモジュール化と言うのか、で話は変わります。前者は欧州のやり方です。後者は日本でやって欲しいやり方。今は、モジュールは使わなきゃいけないんです、どうしても。ありものがあるのに、それを使わないというのは悪です。ただし、ありものをブラッシュアップしながらうまく組み合わせていくことが非常に大事だと思います。

リンカーズ 専務執行役員の桑島 浩彰氏(左)。
リンカーズ 専務執行役員の桑島 浩彰氏(左)。
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