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プラットフォーム戦略はモジュール化とは違う

編集部:あの、トヨタもプラットフォーム戦略ってやっていますよね。

長島氏:トヨタにとってのプラットフォームが何かというと、「車の大きさを決めています」という話なんです。だから、その上にどんなボディでも付けられます、と。だから今話しているモジュール化の話とは、別の話と考えてください。モジュール化というのは、自分の作りたい車が決まっていて、モジュールを組み合わせてその車を作り上げられることを言っているんです。フォルクスワーゲンの場合、特にですけれど、大きい車でも小さい車でも、準備したモジュールのどれかを組み合わせれば、フォルクスワーゲンが考える“いい車”が必ずできるようになっている。そういう話なんです。だから、全然思想が違う。

編集部:車体だけの話じゃない、と。

長島氏:車体だけの話じゃないです。性能とでも言うんでしょうか。フォルクスワーゲンが定義した性能を、レゴブロックの組み合わせで作れる。そういうモジュールを作っているんです。性能が先にある。その性能を生み出すためのモジュールとして、全部あらかじめ設計されているんです。だから、組み合わせればいい車になる。そういうものだと考えています。

桑島氏:ああ、なるほど。

長島氏:プラットフォーム戦略の場合、まずプラットフォームがあります。そして、その上にその都度いい車を作るんです。モノづくりの順番が違うんですよ。先に「いい車」の定義があって、それをブロックの組合せで作れるように体系化したのがフォルクスワーゲン。車体を作りました、その上に自由に好きなように車を作ってくださいっていうのが、プラットフォーム戦略。いい車の定義は、作った後に生まれる。結果としてできた車なんですよ。

編集部:作るとき、例えば問題が起こった時の手戻りは、後者のプラットフォーム戦略の方が大きそうですね。

長島氏:そうですね。手戻りかどうかは別にして量産開発の時間は、当たり前ですけど後者の方が、時間がかかるでしょうね。どんな車を作るっていうのを、プラットフォームだけしかない中で、その上を全部新しく作っていくので。じゃあ今回のカローラはこうやって作ろうとか。何々はこうやって作ろうって全部やっていくから、すごい時間かかる。

 前者は組み立てるだけなので早い。ただ、先行開発の時間がかかるんですよ。最初の車の定義と、モジュールの種類をどうやって用意しておこうかっていうところに、めちゃくちゃ頭を使うことになる。それを作る時間がえらい長いでしょうね。でも、1度それができているから、じゃあゴルフ作ります、パサート作ります、っていう時にはモジュールを取ってくるだけなので、量産開発はめちゃくちゃ短い。まぁ大げさに言っていますけど(笑)。

桑島氏:プラットフォーム戦略にも、モジュールの考え方ってあるのでしょうか。

長島氏:部品共通化、という思想はあります。ただ、事前に性能をモジュールに割り付けるという思想はないでしょう。

編集部:そこは、桑島さんが言っていたように、日本人がとても苦手なところですよね。OSが作れない理由と同じで。

長島氏:ええ、難しい話なんですけれど。プラットフォーム戦略では、プラットフォームの上にそれぞれの車を作りますよね。そうすると、その作った人で性能がばらつく。一方、モジュール化の場合は、組み立てれば、皆が読んだ通りの車になるんですよ。ただ、プラットフォーム戦略は、ばらつくんだけどいいチーフエンジニアがいると、えらいいい車になるわけです。ちょっと外したエンジニアがいると、“なんだこの車”みたいになりますが。

編集部:中国で大量生産しやすいのはフォルクスワーゲンということですよね。日本は、人材を一生懸命育てることで、ある程度ばらつきを人力によって抑えているということでしょうか。

長島氏:そうですね。ただ、開発の話です。生産は生産で事情が異なりますが。

編集部:ドイツのメーカーとしては、例えばメルセデス・ベンツも同じなのでしょうか。

長島氏:フォルクスワーゲンと基本は一緒です。もうちょっとプレミアムなので、いろんなところの自由度はフォルクスワーゲンよりも高いし、原価も使えるので、ガチガチの縛りは少ないですけれど。でも、思想は完全に一緒です。