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現地合弁会社の意味とは

編集部:日本企業としては、現地に20年、30年と根付いている人とつながって、その人に売ってもらうしかないということなんでしょうか。あるいは、相手にとって自分の製品はメリットがあるのかを、現地のコンサルティングファームみたいなところにお金を払って考えてもらうようなことをしなくてはいけないのでしょうか。

岸岡氏:日系大手自動車メーカーも日系大手機械メーカーも、そういった投資をしてきています。ファナックは、ドイツSiemens社やGE社などと合弁会社をつくっています。あまりニュースにならないのですが、そういったことがいかに宝になっているかに気付くことが大切です。合弁というニュースが出るとなるほどと思うし、解消しましたとなるとうまくいかなかったんだと思う。これは非常に短絡的な考えですね。例えば、トヨタ自動車とGM社は、NUMMI事業で得たことが互いにものすごくたくさんあったわけです。それを一言で片づけてしまうのは単一民族的な見方です。社会貢献の意味もありますが、カリフォルニア州でGM社はトヨタ生産方式を学び、トヨタ自動車は市場に受け入れられた。学ぶということには奥深い面がありますし、受け入れられるということにはお金では買えないものを形にできる価値があります。

 当時、日本製の自動車は粗悪品といわれていましたが、日系大手自動車メーカーは努力の末、そこからはい上がった。事業は、1社では完結できません。自動車などは顕著で、ピラミッドが大きい世界です。日系大手自動車メーカーがポツンと出ていっても何もできないんです。それを、やってこられるようにしてきたんですね。

 やはり、現地にファンが増えないとダメです。いくら商品が良くてもなかなか浸透しないですよ。

編集部:商社はかつて、その機能を持っていたのではないんですか。

岸岡氏:持っていましたね。進出支援をはじめ、よくデスクを貸してあげて、仲間として存在していました。ところが今は事業会社が増え、投資寄りになってきました。

桑島氏:私はこれに対して問題意識を持っているんです。私のかつて勤務していた会社もアメリカの支店を結構閉めてるんですね。いわゆる代理店、物を担いで現地に根差して……という機能を減らしている。まだやっているところもありますが、米国においてはそういうのはほとんどやらないし、どこの商社も多分、あまり注力していないですよね。

岸岡氏:ものづくりを支える明治電機工業のような特殊な専門商社は非常に貴重で、橋渡しがうまく機能しています。

桑島氏:逆にそこを攻めれば、かつての商社のようなことがビジネスになると、私はみています。ですから、リンカーズのビジネスとしても、そこに商機があるのではないかと。

岸岡氏:まず大企業が進出して、海外進出率は日本の企業全体で2%ぐらいでしょうか。そして今、中堅企業の勝負時が来たように思います。中小企業も連動して……といった意味で、中小企業の方向性が変わったんですね。中堅も含めると。幅を増やしてサポートしないとまずいという危機感が出てきたと思うんですね。諸先輩方々からは出稼ぎ根性で出てきてはダメだと口を酸っぱくご助言いただいております。

桑島氏:ところで、米国に出てくる日本企業が変わってきているということでしたが、どういうふうに変わったのでしょうか。

岸岡氏:業種ですね。例えば、加工業、インフラや介護ロボットを作る会社や、ビジョン関係、ハイテク関係も出てきています。

 シカゴの郊外は、まるで日本メーカーの城下町ですよ。ヤマザキマザックなど、日本を代表する会社が主要高速道路の両側を埋め尽くしています。そういう風景を見ていると、安心してしまっている感があります。

 ここ10年ぐらいは、ずっとアジアに目が行っていました。しかし、欧米でどういう動きがあるのか、特に規制・規格について知る必要があります。昔、ベータとVHSの規格戦争がありましたね。製品技術や品質のみならず、需要や規格動向、必要とされているサプライチェーンのプラットフォームやキャパシティーなど全体像を理解できることが非常に重要です。後でただ知るよりも、知っておくために投資をすることには、非常に価値があります。そういった意味でも、米国進出には意義があると思います。

桑島氏:米国における日系企業のチャンスはどういうところに転がっていて、それをつかむために日系企業は何をすべきでしょうか。

岸岡氏:加工産業が全般的に出てきていないですよね。また、製造業を強くする、検査、生産技術、品質管理システム、ぽかよけ、など製造の作り込みを教え込みながら技術移転をするのが必要とされていると思います。

桑島氏:中小企業にもチャンスがある。

岸岡氏:あると思いますね。

桑島氏:それは、加工の機能が市場から消えてしまったからですか。

岸岡氏:消えたというか、そもそも出てきていないので、土俵にも上がっていない。

桑島氏:米国に製造業が戻ろうとしている。人も育てようとしている。でも機能がない。とすると、日本でものづくり機能を残している中小企業の出番ですね。

岸岡氏:護送船団で組んで本気で出てこないと。連絡事務所じゃダメですよ。例えば航空産業ではITAR(International Traffic in Arms Regulations)という規制があって国内で加工することなどが条件にもなってきますので、やはり出なくてはならない。これも地場でやる意義の一つです。

桑島氏:東京や中部などを回ると、米国に工場を造りたいと言っている、中小金属加工メーカーの経営者がいますよ。

岸岡氏:納入先はBoeing社など大手企業をはじめ、中堅・中小企業にも増えていますね。