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 「ソバ屋の出前」といえば、日本語の辞書では「当てにならないことのたとえ」とされています。ただ、単に当てにならないというよりは、ソバ屋というものは催促の電話に「今出ました」と返事するものだと、社会的に暗黙の合意ができている、ともいえるのではないでしょうか。

 英語にもそういうフレーズがあり、筆者の事務所でもしばしば耳にします。こういった表現はむしろ、英語の方が多彩かもしれません。話した人の考えや心理が本来のフレーズの文言と多少ズレている一方で、そのズレが何となく許されている雰囲気があるのです。

例文1:「You got it」

 何かを依頼された時の返事として、特に営業マンタイプがよく使うフレーズで、意訳すれば「了解しました」「承りました」くらいの感じです。直訳すれば「あなたは受け取りました」あるいは「あなたはもう受け取っています」ですが、実際にこれを言うタイミングで依頼事が完了していることはまずなく、最初に書いたように依頼されたその時に返すフレーズです。

 つまり「もうあなたに届けたも同然です」というニュアンスを伝えたいのでしょうが、このフレーズをよく使うタイプの人ほど一度依頼しただけではすぐに忘れてしまう傾向が見受けられ、安請け合いの匂いがプンプンするフレーズと言えるかもしれません。

例文2:「I'm on it」

 どちらかというと依頼というより上司から指示された時に答える言い方の一つです。始めて指示された時に限らず、以前指示された事がどうなっているのか聞かれた時にもよく使うようです。表向きは「やっています」ですが、本当に既に手掛けていれば、何をどの程度既にやってどういう困難があったかなど聞かれもしない事をまくし立てる人が多いです。言葉少なに「I'm on it」と言ったら、本当は「これからやります」だと解釈した方が無難でしょう。

 この辺りのニュアンスは結構暗黙の了解として誰もが共有していると思うのですが、「じゃ今までやってなかったの?」という突っ込みはほとんど聞かれません。よほどタチが悪いケースでない限り、今までの経緯を追求するよりも今から先の話に集中しようという姿勢の表れかもしれません。