2つめは、電源システムを見直し、電力効率を大幅に高めたことだ。加減速時に発生する回生エネルギーを回収するLiイオンキャパシターをホイール内に内蔵した。具体的には、1500F品を12個直列に接続したモジュールだ。第1世代では、回生エネルギーをワイヤレス給電経由で車載バッテリーに蓄えていた。Liイオンキャパシターを搭載したことで、回生エネルギーをそのままモーターの駆動に使える。その分だけ、電力効率を高められる。

 モーターを駆動する電力の供給経路は2つある。第1の経路は路面コイルからホイールに取り付けた給電コイルに供給する経路。この経路の電力効率は90. 24 %と高い。「コイル間のギャップを最適化すれば、94%程度に高められる」(同氏)。第2の経路は、第1世代でも用意していた車体側の車載コイルと、ホイールに取り付けた給電コイルとの経路だ。この経路は、双方向のワイヤレス給電が可能である。

 こうした電源システムを採用したため、余った回生エネルギーを車載バッテリーに充電し、有効活用できる。さらに、Liイオンキャパシターを搭載したことで、車載バッテリーの容量を減らせるようになった。ただし、デメリットもある。それは電力制御が非常に複雑になることだ。これについては、「デジタル制御を採用した新しいエネルギーマネジメント回路を開発することで対応した」(同氏)という。なお、電源システムを構成するパワー半導体には、すべてSi C製を採用した(図3)。

図3 電源システム
図3 電源システム
車体側にDC-DCコンバーターとインバーター、車輪側にAC-DCコンバーターやモーター駆動用3相PWMインバーター、DC-DCコンバーター、路面側にインバーターが必要になる。いずれの電源回路も、パワーデバイスにはSiC製を採用した。
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 3つめは、モーターの出力電力を12kWに増やしたことだ。第1世代は3.3kWだった。この結果、4輪合計の出力電力は48kWとなる。これは現在販売中のEVと同程度であり、実用性が大幅に高まったといえる。

 すでに藤本氏は、「第3世代」の構想に着手している。モーターの出力電力向上や、各コイルの小型化、Liイオンキャパシターの小型化などに取り組む。こうして、走行中給電+インホイールモーターを採用したEVの実用性をさらに高める考えだ。

<参考文献>
1)藤本, 竹内, 畑, 居村, 佐藤, 郡司,「走行中ワイヤレス電力伝送に対応した第2世代ワイヤレスインホイールモータの開発」, 自動車技術会(JSAE)2017 年春季大会, 講演番号050, 2017年5月.