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――その後のパナソニックのSiCデバイスの開発は。

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北畠 入手できる結晶ウエハーの品質が上がり、エピタキシャル成長技術の開発も進み、かなり良いものができるようになったので、デバイスという意味では高周波デバイス向けのMESFETと、パワーデバイス向けのMOSFETを作製した。パワーデバイス向けは、ある時はMOSFETとして、ある時はダイオードとして機能するなど、1個で2つの機能を持ち合わせている素子を発明し、デバイス開発という意味でもかなりユニークな技術を開発したことから、パナソニックとしても新聞発表を何度か行った。サンプル出荷などを念頭に置いたパイロットラインを早くから構築するなど、積極的な取り組みをしてきた。ただし、事業の本格的な立ち上げにはまだ時間が必要だと現在も思っている。

――その後は。

北畠 2010年ごろのパナソニックの開発の軸足も、材料開発は一段落し、デバイス開発にシフトしていた。その当時、「新材料パワー半導体プロジェクト」という名称で国家プロジェクトが立ち上がり、つくばの産業技術総合研究所(産総研)に集中研が設けられた。私自身が材料開発のプロなので、私はこのプロジェクトに対し、SiCウエハーの欠陥の統合評価技術開発の必要性を提案し、これがきっかけでプロジェクトに参画することになった。5年間のプロジェクトだったが、私は評価グループのリーダーとして、SiCウエハーの評価に必要なプラットフォーム開発を主導することになった。どこにどのような欠陥あるのか(観察/認識)、さらに各々の欠陥が、どのような構造を有し(欠陥構造解析)、デバイスにどのような影響を及ぼすのか(電気特性/信頼性解析)、を統合的に把握するというものである。

 具体的には、微分干渉顕微鏡を使ってSiCエピタキシャルウエハー(エピウエハー)を観察し、凸凹があると画像解析で欠陥認識できる装置を協同で発展させた。国プロではこの観察/認識をした上で、電気特性解析などをスピーディーに統計的に行えるよう技術開発を進め、成果を得ることができた。現在、この観察/認識装置は、製造装置メーカーのレーザーテック(横浜市港北区)がSiCウエハー欠陥検査/レビュー装置「WASAVI」として市場に販売している。

――そこから、どういった経緯で東洋炭素に移られることになったのですか。

北畠 つくばの国プロ時代に、SiCの工業化に役立つ成果を収めるができたと自負している。この中で「潜傷」と呼ぶ深い傷の欠陥がSiCエピウエハーにとってキラー欠陥(重大な欠陥)となる可能性が高いことは理解したが、その時点ではこの潜傷を根本的に減らす技術開発までは対応できなかった。東洋炭素はもともと、関西学院大学の金子忠昭教授とSiCウエハーに関する開発を新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」を含めて長年続けており、この潜傷に対する知見も豊富に持っていた。私自身、国プロが終わった時点で、定年まで残すところ1年ということもあり、東洋炭素からの誘いもあって、2015年4月に東洋炭素に入社することになった。