PR

大坪 やっぱりありますね。傷が入らないような滑らかな加工をどう実現するのかというと、やっぱり人の手作業だけでは大変なんです。だから、工作機械や工具の革新もありますし、IoTということでいえば、それこそセンサーで工具の振動を監視して、異常が起きたら加工速度を下げるというような制御をしているメーカーもあります。

野々上 やはりそこは革新し続けていかないと、最先端のものづくりはできないんですね。

大坪 2014年に私たちは「VISAI」という工作機械を作りました(関連記事1関連記事2)。インターネットにつながり、遠隔地から制御できる機能を備えるものです。このVISAIで私たちがいいたかったのは、よくIoTによってネットワークやソフトウエアの技術が進化していくと、日本のものづくりがいらなくなるというような言説がありますが、むしろ精度や品質がもっと重要になるのではないかということです。

Webサーバーを備える工作機械「VISAI」の初号機「VISAI L-01」
Webサーバーを備える工作機械「VISAI」の初号機「VISAI L-01」(出所:由紀精密)
[画像のクリックで拡大表示]

 VISAIは、コントローラーの中にWebサーバーがあるので、遠隔地から操作できます。こんなふうに工作機械がネットワークにつながると、ハードウエアには精度や品質が求められるようになると思っています。例えば、ネットワークプリンターでどこでも出力できるんだったら、やっぱりきれいに出るプリンターがいいですよね。工作機械も一緒のはずです。デジタルデータはいくら複製・転送しても劣化しないですから、それを出力するところでは最も良いものが求められるわけです。

 印刷でも造形でも、デジタルデータをリアルに変換するところで精度が必要になります。工作機械だったらやっぱり日本が強いです。あとはドイツでしょうか。だからVISAIでは精度にこだわりました。話題性があるのでIoTという部分が取り上げられやすいんですが、IoTを成り立たせるには実はハードウエアの精度が必要という、その両方を攻めたんです。IoTで物を作るための裾野が広がるんだったら、物を作るための物を日本が作ればいいんじゃないかと思っています。

野々上 結局はそういう会社が強いんですよね。

大坪 最近は金型も世界中で作れますが、その金型を作るマザーマシンとしての工作機械は世界的にも日本製が最も多く使われます。物流のことを考えると最終製品は消費地で作った方がいいですが、その起点となるものは日本で作っているわけです。インターネットでデータを送れる時代ですから、ものづくりもそんなふうに最適化されていくと思います。

野々上 確かにそうです。材料さえその場にあれば、あとは削ったり成形したりできるわけですから。

大坪 VISAIは、工作機械の種類としては旋盤になります。なぜ旋盤を選んだかというと、旋盤で作るような軸部品は特に精度が重要になるからです。筐体などボディーを構成する部品は3Dプリンターで作ったとしても、軸部品の精度や動きが悪いとがっかりですよね。高精度なものは旋盤、精度がそこまで要求されないものは3Dプリンターと使い分ければ、多くのものを作ることができます。

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)