慶應義塾大学大学院の前野隆司教授は、つかみどころのない不思議な人である。

 超音波モーターの研究から興味が広がり、ロボットの触覚研究に。その後、イノベーション教育を立ち上げ、哲学に興味を持った今は「幸福学」の第一人者と呼ばれている。幅広い分野でその才能をいかんなく発揮してきた才人にもかかわらず、「イノベーションは、誰でも起こせる」と公言してはばからない。

 「それならば、ぜひそのノウハウを…」ということで、前野教授に「誰でもできるイノベーション」についてコラムを担当していただくことにした。題して「イノベーションの幸福学」。

 第一線で活躍するゲストと前野教授の対話によって、「誰でもイノベーションを起こして、幸せになれるエッセンス」を引き出していく。

前野 隆司(まえの・たかし)
慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授
前野 隆司(まえの・たかし) 1962年山口生まれ。広島育ち。1984年東京工業大学工学部卒業、1986年東京工業大学理工学研究科修士課程修了、同年キヤノン入社、1993年博士(工学)学位取得(東京工業大学)、1995年慶應義塾大学理工学部専任講師、同助教授、同教授を経て、2008年よりSDM研究科教授。2011年4月よりSDM研究科委員長。この間、1990〜1992年カリフォルニア大学バークレー校Visiting Industrial Fellow、2001年ハーバード大学Visiting Professor。著書に『幸せの日本論—日本人という謎を解く』(角川新書)、『システム×デザイン思考で世界を変える—慶應SDM「イノベーションのつくり方」』(日経BP社)、『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『「死ぬのが怖い」とはどういうことか』(講談社)、『錯覚する脳: 「おいしい」も「痛い」も幻想だった』(ちくま文庫)、『脳はなぜ「心」を作ったのか—「私」の謎を解く受動意識仮説』(ちくま文庫)、『思考脳力のつくり方—仕事と人生を革新する四つの思考法』(角川oneテーマ21)など多数(写真:加藤 康)