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「僕の学生で面白い女性社長がいるから、ぜひ改めて話を聞いてみたいんだよね」。慶應義塾大学大学院の前野隆司教授は言う。「イノベーションの幸福学」の2人目のゲストとしてお迎えしたのは、前野教授の下で大学院生として学ぶ、ホッピービバレッジの石渡美奈社長。創業100年を超える老舗企業創業家のお嬢様にして、一歩先ゆくユニークな宣伝広告やブランディングなどのアイデア、数々のイノベーションを起こして3代目社長として辣腕を振るっている。消費者に常に寄り添いながら愛され続ける清涼飲料水「ホッピー」を作り続ける3代にわたるイノベーションの秘訣を師弟対談でひも解く。

気付いたらそうなっていたという感じで…

前野 石渡さんが経営に携わるようになってから、ホッピービバレッジの売り上げはどのくらい伸びたの?

石渡 4倍弱くらいです。1997年に入社しまして、副社長になる前年、2001年の売り上げがボトムで8億円。今は年商40億円の壁が破れなくて足踏みしています。

前野 そうすると、10数年で30億円を生み出したってこと? きっとそこには大きなイノベーションがあったんでしょうね。

前野教授と石渡さん(右)(写真:加藤 康)
前野教授と石渡さん(右)(写真:加藤 康)
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石渡 結果的に気付いたらそうなっていたという感じで、イノベーションを起こしているなどというイメージはありませんでした。

前野 「戦略的に」というよりは、「がむしゃらにやった」という感じですか。

石渡 うーん、夢中になって仕事はしていたように思いますけど…。

 私が入社したころのホッピービバレッジは、旧態然とした雰囲気が残っていました。本社がある東京・赤坂と、工場がある東京都調布市はクルマで30分程度の距離で、社員数は30〜40人の会社ですが、本社と製造現場の社員が互いのことをほとんど知らないという状態だったんです。街で会っても同じ会社の人だとは気が付かないくらい、バラバラというか、分断されていました。

 私がホッピーに入社する前にお世話になっていた会社は優良企業で、いわゆる「会社のあるべき姿」というものを経験させてもらっていましたので、自分の会社を見たときに「何かが違う。これはおかしい」と感じましたね。そこでまずは、赤坂と調布をつなごうと思いました。

前野 大企業病によくある「縦割り組織の弊害」が、小さい会社で起きていたということですか。

石渡 オーナー家が社長の座争いのようなことをやっていたこともあって、製造と販売の部隊がバラバラになっていたんです。

前野 でも、当初は社長になるつもりもなく、「いいお婿さんでももらって…」なんて考えていたんじゃないの?