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ポイントは、「自分たちは考えることができる」と信じること

米倉 先日、米国シリコンバレーを訪れた時に「Uber」を使いました。時間が余ったから、相乗りにしたんです。値段が安くなるので。

 3人で相乗りしたのですが、タクシー運転手は米インテルの元技術者、僕の隣に座った人は米テスラの技術者でした。そのあとに乗り込んできたのは、あまり話をしませんでしたが黒人女性で、米スタンフォード大学の大学院生のようでしたね。相乗りの車内で運転手は「定年後の楽しみとして新しい職に就けてハッピーだ」と話していましたよ。

 同じシステムを日本でやろうとしたら、タクシー業界が黙っていないでしょうね。でも、日本全体の自動車数に占めるタクシーの台数はほんのわずかで、1%に満たない。それを守るために便利なサービスが使えない、提供できないというのはおかしいでしょう。僕はやらせたらいいと思うけれども、「タクシードライバーが困る」と。だったら、「新しいアイデアを考えなさい」ということなんですね。

 共産主義の国が資本主義を取り入れて「一国二制度」になっているのは、共産主義だけでは資本主義のダイナミズムにかなわないからです。資本主義のシステムには格差を生んだりするような、すごく悪い面があることも事実だけれども、「富をつくる」「新しいアイデアを生む」という点については他のシステムの追随を許していません。つまり、イノベーションの遂行です。

 Uberのようなサービスが広がると困る人がいる。失業が増える。ならば、どうすれば、Uberに負けないサービスができるのか。どのようにしたら、顧客のためにいいことができるのか。ポイントは、それを「自分たちは考えることができる」と信じるかどうかなんです。僕はできると信じます。

 でも、社会システムを変革すると、どうしても多少はこぼれ落ちる人が出てきてしまう。そこから先は政府の責任で対処する必要があると思います。政府の役割は規制することではなく、規制の緩和であり、こぼれ落ちた人たちのセーフティーネットをつくることです。

米倉誠一郎(よねくら・せいいちろう)。法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授、一橋大学イノベーション研究センター特任教授、アカデミーヒルズ日本元気塾塾長。1953年東京都出身。イノベーションを核とした企業の経営戦略と発展プロセス、組織の史的研究を専門とし、日本のイノベーション研究をリード。ニュービジネスとアントレプレナーシップを応援するイノベーション研究の第一人者。「Happy Day TOKYO」「ティーチャーズ・イニシアティブ」「QUEST CUP」などNPO活動にも取り組む。『イノベーターたちの日本史:近代日本の創造的対応』(東洋経済新報社)、『2枚目の名刺 未来を変える働き方」(講談社+α新書)、『オープン・イノベーションのマネジメント』(有斐閣)、『創発的破壊 未来をつくるイノベーション』(ミシマ社)、『脱カリスマ時代のリーダー論』(NTT出版)、『経営革命の構造』(岩波新書)など著書多数。(写真:加藤 康)
米倉誠一郎(よねくら・せいいちろう)。法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授、一橋大学イノベーション研究センター特任教授、アカデミーヒルズ日本元気塾塾長。1953年東京都出身。イノベーションを核とした企業の経営戦略と発展プロセス、組織の史的研究を専門とし、日本のイノベーション研究をリード。ニュービジネスとアントレプレナーシップを応援するイノベーション研究の第一人者。「Happy Day TOKYO」「ティーチャーズ・イニシアティブ」「QUEST CUP」などNPO活動にも取り組む。『イノベーターたちの日本史:近代日本の創造的対応』(東洋経済新報社)、『2枚目の名刺 未来を変える働き方」(講談社+α新書)、『オープン・イノベーションのマネジメント』(有斐閣)、『創発的破壊 未来をつくるイノベーション』(ミシマ社)、『脱カリスマ時代のリーダー論』(NTT出版)、『経営革命の構造』(岩波新書)など著書多数。(写真:加藤 康)

前野 競争原理ですね。

米倉 競争原理というと「日本や世界をダメにしているのは競争原理と資本主義、悪徳キャピタリズムじゃないか」というピケティのような議論があります。でも、そこで終わったら思考停止です。次はどうすべきか、その答えを出さなければなりません。多様性を認め、競争を認め、価値観を認めながら、平和であまりギスギスしない社会をどのようにして温存し、新しいシステムを構築していくか。そこはこれからですよね。まだ日本は、いい位置にいますから。

前野 「いい位置」をもう少し具体的にするとどんなイメージですか。

米倉 例えば、米国の金融機関のように経営者のボーナスが数十億円というのはあり得ないでしょう。だけど、日本の大手メガバンクの頭取の給与が数千万円というのもあり得ないと思います。もう少し多くの金額の給料をもらって責任のあることをやってほしい。中間あたりで日本型の資本主義を進めたらいいのだと思います。

 競争は否定しないし、いいことをやったらインセンティブもドンと出す。これは企業活動もそうですし、先ほど話した教育でも同じです。知恵を使って、社会を良くする方向に向かっていける余地がまだ日本にあると思うんです。

前野 なるほど。余っている労働力をマッチングしたり、シェアしたりするようなことも、その一つということですね。