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ベストを作って満足してしまう

 6層です。ソフトウエアで両目の表示を独立して制御しています。3年間、目を開発しているメンバーがいるのですが、そのように開発が自律的に進むというのはありがたい話です。この部分は結構、日本的だと思うんです。「そこまでやるか!」というこだわりで、完成形に持っていくパワーというか。

前野 確かに。他にも、あちこちにいろいろなこだわりが詰まっているんでしょう?

 声も3年かけて開発しています。最初は最高の声を一発録りして、それを再生するようなアプローチでした。アーティストの性分として自分にとってベストなものを作りたくなるので、ベストな声を作って満足してしまうんです。でも、確かにその声はかわいいけれども、一緒に住んでいると飽きてしまいます。

林 要(はやし かなめ)。GROOVE X 代表取締役。1973年愛知県出身。東京都立科学技術大学(現・首都大学東京)大学院修士課程修了後、1998年にトヨタ自動車入社。同社初のスーパーカー「レクサスLFA」、トヨタF1開発などを担当。2011年に孫正義後継者育成プログラム「ソフトバンクアカデミア」の外部第一期生として参加後、2012年にソフトバンクに招聘され、人型ロボット「Pepper」の開発プロジェクトに携わる。2015年11月にGROOVE Xを設立。家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」の開発で大きな注目を集めている。(写真:加藤 康)
林 要(はやし かなめ)。GROOVE X 代表取締役。1973年愛知県出身。東京都立科学技術大学(現・首都大学東京)大学院修士課程修了後、1998年にトヨタ自動車入社。同社初のスーパーカー「レクサスLFA」、トヨタF1開発などを担当。2011年に孫正義後継者育成プログラム「ソフトバンクアカデミア」の外部第一期生として参加後、2012年にソフトバンクに招聘され、人型ロボット「Pepper」の開発プロジェクトに携わる。2015年11月にGROOVE Xを設立。家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」の開発で大きな注目を集めている。(写真:加藤 康)

前野 「ああ、同じだ」という印象になってしまう。

 僕は「ベストに固執するよりバリエーションが多い方がいい。それも状況や個体によって声が生き物のように変わってほしい。同じ状況でも内部状態によってLOVOT自身が元気なのか、元気じゃないのかといったことも含めて全部変わるようにしてほしい」と要望しました。その瞬間からエンジニアにとっては、つらい開発が始まったようです。現状は、生物のように音を生成するシミュレーターを内蔵しています。人間の声と同じように喉や鼻を通る空気の経路を想定し、それぞれの経路の振動が影響し合って声を生成する仕組みです。「LOVOTに喉があるとしたらこんな響きだよね」というように。

前野 なるほど。「喉があったらこうなる」というシミュレーションは、林さんが携わっていた流体力学に通じますね。しかも、確か持ち主の声をサンプリングして、それを基に声を作るのですよね。

 持ち主の声の波形はサンプリングしませんが、持ち主が言っている言葉を聞いて、その音素の一部を使って返答するんです。

前野 声の質はLOVOT自身のものだけれども、発声する音のパターンは持ち主のものということですか。

 そうですね。音素については持ち主の発声のパターンを「学習する」と言った方がいいかもしれません。「触られ方」についても、「触れられているだけなのか、なでられているのか」を判別したりします。

前野 面白いですね。頭の上にある「角(つの)」にはカメラがついているんですよね。普通のカメラですか。