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サンタは実在する

栗原 はい。最初は激安量販店で11月にサンタの服を見つけまして、「まだ11月なのにサンタが来たら面白いだろうな」と思ったんです。子どもたちが「サンタさんだ」「まだ11月だよ」と声をかけてくれまして、「慌てん坊なんだよ」とか言ったりして。すごく喜んでもらったんです。

前野 プレゼントは?

栗原 もちろん、催促されますよ。激安量販店に行ってお菓子やハンカチなどを大量購入してそれを白い袋に入れて配っていたら、さらに喜ばれるようになりました。

前野 子どもたち、とても喜んだだろうな。

栗原 でも昨年、「プレゼントを配る先は子どもではないんじゃないか」と思ったんです。

前野 何かあったの?

栗原 昨年、3人に泣かれちゃったんです。特に印象的だったのはコンビニでアルバイトしていたおばちゃんで、「おばちゃん、今年も1年間がんばったね」とプレゼントを渡したら、「そうなのよ、私、がんばったのよ」と急に泣き始めて。そこから身の上話になり、「旦那もひと言も褒めてくれないし、子どもも東京に行っちゃったし、誰も認めてくれない。ここの店長もそう」って。それで、「そっか、そっか、がんばったよね」って話を聞きながら慰めていたんですよ。「実は、やさしさを欲しているのは、周囲から認められる機会がなかなかないおばちゃん世代なのかな」と思いまして、それからは年齢問わず、どんどんプレゼントをあげるようになりました。

前野 どのくらいの数を配っているの?

栗原 3000個くらいです。サンタをやることで非日常の空間が味わえて、とてもハッピーな気持ちになります。そして、サンタは幸せをあげる人だと思っていたけど、1番ハッピーになるのはサンタ自身なのだと知りました。世界中の人、せめて東京中の人が12月にみんなでサンタになれば、みんな、超ハッピーですよ。さらに子どもに対してもうそつきじゃなくなるでしょ。

前野 サンタは自分だったということですね。

栗原 やがて大人になったときに気づくんです。サンタは親じゃない、サンタなんていないと思ったけど、「いた、自分だ」って。それが繰り返されていったらすごくハッピーだし、そういう世の中になればいいなと思います。「与えられる喜び」より「与える喜び」の方がハッピーだってことに気付いてほしいですね。

前野 確かに。幸福学の研究で、「お金は自分のために使うより、ほかの人のために使う方が幸せになる」という結果がありますからね。そうはいっても、みんなはやはり、なかなかサンタにはなれません。みんなは栗原さんの話から何を学べばいいんでしょうね。ここまで大げさじゃなくても、日常に怒りや面白さをかき混ぜていくと、幸せでイノベーティブになれるということですか。

栗原 自分でもビックリすることがいいでしょうね。自分の想定内じゃだめなんです。

前野 自分を驚かせるということですか、他の人を驚かせることじゃなくて。

栗原 そうです。普通は自分自身を止めようとしますから。サンタも最初、「その格好で出掛けるの」と妻に言われて躊躇しましたから。

前野 さすがに慣れている奥さんも、そう言ったの?

栗原 でも、その後は「もっと白い大きくて丈夫な袋があったから買っておいたよ」って送り出してくれます。セーラー服を着て外へ出ようとした時が一番止められましたね。

前野 セーラー服って!?

栗原 エスカレーターや階段で、たまたま女子高生の後ろにいると、鞄でおしりをおさえるわけです。あれにずっとイラッとしていたんです。「別に見やしないのに」って。でも、いざ、自分がスカートを履いてスースーしてみると、ついおさえちゃう自分がいました。「あ、これはおさえちゃうな」と思って、別に「お前、見るなよ」という意味だけではないという女子の気持ちが分かりました。

前野 確かにやってみないと分からないもんね。サンタにセーラー服か…。なかなか僕にはハードルが高そうだ(笑)。

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)
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