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体の動きは極めてユニバーサル

矢野 ただ、スマホにアプリを入れてもらうためには何か仕掛けがいると考えまして、スマホで職場の幸福(ハピネス)度を計測する「Happiness Planet(ハピネス・プラネット)」という取り組みを始めることにしました。職場対抗でハピネス度を競う大会も手がけています。

 まずは2017年9月に社内で小規模に開催してみたところ、割と評判がよかったものですから、2018年2月に少し規模を大きくして開催したところ、国内の62社、1475人の参加があったので、9月にも大会を開いたんです。

 体の動きは極めてユニバーサルで文化的な違いがなく、世界共通です。まさに地球規模でオリンピックやワールドカップのように「ハピネス度を楽しく競い合って、切磋琢磨して……」という大会です。

矢野 和男(やの・かずお)。日立製作所 理事 研究開発グループ技師長。1959年山形県出身。早稲田大学大学院理工学研究科修了後、1984年日立製作所入社。同社の中央研究所にて半導体研究に携わり、1993年に単一電子メモリの室温動作に世界で初めて成功する。同年、博士号(工学)を取得。2004年から着手した世界に先駆けたウエアラブル技術とビッグデータ収集・活用の研究で世界をけん引。論文被引用2500件に上り、特許出願350件を超える。AIからナノテクまで専門性の広さと深さで知られる。著書に『データの見えざる手』(草思社)など。IEEE フェロー。東京工業大学大学院連携教授。文部科学省情報科学技術委員。(写真:加藤 康)
矢野 和男(やの・かずお)。日立製作所 理事 研究開発グループ技師長。1959年山形県出身。早稲田大学大学院理工学研究科修了後、1984年日立製作所入社。同社の中央研究所にて半導体研究に携わり、1993年に単一電子メモリの室温動作に世界で初めて成功する。同年、博士号(工学)を取得。2004年から着手した世界に先駆けたウエアラブル技術とビッグデータ収集・活用の研究で世界をけん引。論文被引用2500件に上り、特許出願350件を超える。AIからナノテクまで専門性の広さと深さで知られる。著書に『データの見えざる手』(草思社)など。IEEE フェロー。東京工業大学大学院連携教授。文部科学省情報科学技術委員。(写真:加藤 康)

前野 「センサーで計測して、よりハッピーだった方の勝ち」ということですか。

矢野 基本的には3週間、スマホを1日3時間だけ身に付けてもらいます。そのときの体の動きのパターンからハピネス度を数値化できるので、その数値が高いかどうかで勝ち負けを決めます。今は団体戦なので、チームのハピネス度を競います。

前野 運動会のように1カ所に集まって何かをやるわけではないのですね。

矢野 その通りです。ただ、大会が終わった後のオフ会は結構盛り上がったので、そういうこともやっていきたいとは思っています。

 いろいろな努力によってハピネス度の数値は変わるので、その期間中にチームを盛り上げるようなことをそれぞれ工夫して、「いつもできないこともやってみたらどう?」ということもお勧めしています。

前野 例えば、どんなことですか。

矢野 社内で開催したときには、研究所の各部門から11の代表チームを選んで、それぞれに3週間のうち1週間目は普通通りに働いてもらい、2週間目と3週間目に特別な秘密の作戦でチームを活性化してもらいました。

 秘密の作戦とは、例えば、朝に出社したときにあいさつだけでなくハイタッチをしたり、就業時間中に10分だけ必ずみんな運動したりするというような取り組みです。ただ、どんな取り組みがポイントにつながるかは、それぞれ職場の文化や仕事の状況などが異なるので分かりません。逆に、普段通りに働く最初の1週間目は結構いい数字を出していたのに、活性化しようとコミュニケーションを増やしたら、どんどんハピネス度が下がってしまったチームもありまして(笑)。「合わないことを無理やりやったらダメだね」と。

前野 アンケートと違ってうそのつきようがないから面白いですね。僕は幸せの研究で、よくアンケート調査をしていますが、謙虚な人は幸せ度が下がってしまうケースがあります。「どんな動きをしたら、ハピネス度の数値が上がるか」は、誰にも分からないものなのですか。

矢野 一応、幸せにつながりやすい動きについては公開しているんですが、理屈は分かっていても意識的にコントロールすることはできません。幸せになってもらうしかないんです。

前野 そこが面白いですよね。最近では、笑顔を計測する手法などもありますが、笑顔はつくることができる。様々な幸福度計測の方法がある中で、矢野さんの方法が最良なのですか。これよりいいものは今後、出てこないのでしょうか。