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 ドイツのAudi、BMW、ダイムラーの3社によるデジタル地図事業者、ドイツHEREの買収。トヨタ自動車と米Uber Technologies(ウーバーテクノロジーズ)の協業、米フォードと中国Baidu(百度)による自動運転向けセンサー開発のVelodyne LiDARへの出資――。自動運転という大変革を前に、自動車業界では新たな体制作りが急ピッチで始まっている。
 自動運転時代のキープレーヤーの座をうかがう戦いは、さまざまな事業を手掛ける企業が入り乱れる状態になっている。参戦しているのは、完成車メーカーや自動車部品サプライヤーのみならず、AI(人工知能)技術を駆使した自動運転ソフトを開発するソフトベンダー、ライドシェアという新しい移動サービスを手がけるクラウドベンダー、デジタル地図作成や自車位置推定/周辺環境測定に欠かせない小型低価格の新世代ライダーを開発するセンサーベンダー、高精細なデジタル3次元地図の整備を進める地図クラウドベンダーである。
 自動運転関連ビジネスは、これからどのような進化・変化を遂げるのだろうか。自動車関連企業の経営戦略と日米欧中のモビリティビジネスに詳しいデロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 パートナーの周 磊(しゅう・らい)氏に、自動運転が切り拓くモビリティビジネスの姿を聞いた。

――トヨタ自動車とウーバーのライドシェアビジネスでの協業や、米GMの米Lyft(リフト)への5億ドル出資など、2016年になって自動車メーカーがライドシェア事業者に歩み寄る行動が出てきた。

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 パートナーの周 磊氏(撮影:新関雅士)
デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 パートナーの周 磊氏(撮影:新関雅士)

 これまで自動車メーカーが手がけたことのないライドシェアという新サービスの広がりが、自動車メーカーに危機感を与えていることは間違いない。ライドシェアサービスの本質を見極め、そこでどのようなビジネスができるのかを学ぶための活動が始まったと見ている。

 ライドシェアサービスは新たな自動車の使い方とビジネスを産み出した。ただ、だからといって自動車メーカーがライドシェアサービスに乗り出すとか、ライドシェア事業者を買収するといった動きが活発になるとは考えていない。UberやLyftのようなライドシェアサービスを作るには、大がかりなIT(情報技術)の仕組みやクラウド技術を自前で用意しなければならないし、IT人材も抱えなければならない。

 仮に自動車メーカーが自ら投資してUber並みのIT会社を作ったとしても、それによって大きな利益が出るとは限らない。ライドシェアサービスが乱立すれば過当競争になって疲弊するだろうし、そもそもライドシェア事業の収益率はそれほど高くない。

 それでもライドシェアという新しいビジネスが多くのユーザーを獲得している現実がある以上、自動車メーカーもその動きを真剣に捉え、ライドシェアビジネスを勉強し、何ができるかを考えなければならない。一連の提携は自動車メーカーとライドシェア事業者がそれぞれ相互に相手の得意とするビジネスを学ぶための取り組みであって、囲い込みのための陣取り合戦のようなものではない。