PR

「次世代医療基盤法」成功のカギは…

武藤 今回の改定では、「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」が新設されました。この分野についてはどう見ていますか。

鈴木 いわゆる遠隔医療には大きく2つあります。1つは、医師と医師をつなぐ「DtoD(Doctor to Doctor)」。例えば、離島などの医師が放射線画像を遠方の専門家に見てもらうといった使い方があります。専門医不足や今後の労働人口の減少などを踏まえれば、これは必ず取り組むべきだと思います。

 もう一つは、医師と患者をつなぐ「DtoP(Doctor to Patient)」。これには2種類あり、まずはウエアラブルデバイスなどを活用した「モニタリング」です。患者の血圧や血糖値などを日常的に取得できるようになれば、そのデータを基にして、医師がより正確な医薬品の処方や生活習慣の改善指導を行うことが期待できます。こうした活用は、ぜひ積極的に進んでほしいと考えます。

[画像のクリックで拡大表示]

 そして、ICTを活用して問診などを実施するもの。オンライン診療というと、真っ先にイメージするのはこのスタイルだと思いますが、これについては今回の改定で一部が保険診療の対象になりましたが、まだこれから幾つもの議論を深めていく必要があります。

武藤 患者個人の健康情報を取得できるモニタリングは、患者のパーソナルな情報を基に個人レベルでの適切な医療を提供するプレシジョン・メディシン(Precision Medicine)には不可欠ですから、そのような利用の促進は私も賛成です。これは、今後の医療・介護分野におけるビッグデータ活用にもつながっていくわけですが、そのベースになるであろう健康・医療・介護のビッグデータを連結した「保健医療データプラットフォーム」構想について、改めて教えてください。

鈴木 保健医療データプラットフォームについては、2020年度の本格運用開始に向けた議論が厚生労働省で既に始まっています。保健医療データプラットフォームに近い仕組みとして、レセプト情報やカルテ情報、調剤情報、健診情報、介護情報などを閲覧できるようなシステムは、各自治体と事業者で既に250ほど作られていますが、これらのシステムには幾つかの課題があります。

 例えば、このようなシステムを作っても、実際に稼働を続けているのは6割程度しかないという現状があります。これは、運用開始当初こそ省庁からの補助金などがあったため支障はなかったのですが、その補助金がなくなってしまうと運用できないという状況に陥ってるのが大きな理由です。また、独自システムで構成されているケースもあるため、その自治体の範囲外ではまったく利用できないという点も挙げられます。データを有効活用するのであれば、全国どこででも利用できるような仕組みでなければいけないのではないでしょうか。

 データ活用という意味では、データを匿名加工して幅広い分野で円滑に利活用する「次世代医療基盤法」も、保健医療データプラットフォームに大きくかかわってくる取り組みの1つです。次世代医療基盤法において、成功のカギを握るのは「ビジネスモデルが成り立っているか」という点だと考えます。匿名データの活用が圧倒的な広がりをみせるためには、創薬への利用や保険事業への展開など、しっかりとしたビジネスモデルの確立が不可欠でしょう。

 これに加えて、セキュリティーとプライバシーについても、万全の対策を取る必要があります。これは医療業界に限った話ではありませんが、そういった対応を取らないと、どこかで必ず問題が出てきます。個人が特定できない通常の疾患データであれば大丈夫だと思いますが、遺伝性の疾患などでは人物が同定できてしまう可能性も否定できないだけに、慎重を期する必要があるでしょう。