複数の周波数帯を束ねることにより、1ユーザーが使用可能な帯域を広げ、高速通信を実現する技術として、近年、広く一般的に認知され始めてきている「キャリアアグリゲーション」。
今回のコラムでは、キャリアアグリゲーションに対するこれまでの標準化状況と最新動向をお伝えします。
複数のReleaseにわたって仕様化されたキャリアアグリゲーション
3GPPでは、Release 10 LTE (LTE-Advanced)からキャリアアグリゲーションの仕様化が行われています。具体的には、コンポーネントキャリアと呼ばれる基本周波数ブロックを最大20MHzの周波数帯域で定義し、このコンポーネントキャリアを複数(最大5つ)束ねることによって(最大100MHz帯域の)広帯域化を実現しています。
コンポーネントキャリアを最大20MHz帯域として定義した理由は、20MHz帯域を最大の周波数帯域としてサポートしているRelease 8 LTE (LTE)との後方互換性(バックワードコンパチビリティー)を実現することにあります。
後方互換性とは、例えば図に示すように、100MHz帯域をサポートするLTE-Advanced基地局配下においてLTE-Advanced端末をサポートするだけでなく、LTE端末についても、最大20MHz帯域のコンポーネントキャリアに接続させることによってLTE-Advanced基地局でサポート可能となることを指しています。

キャリアアグリゲーション関連技術は、後続のReleaseとなるRelease 11以降も継続して仕様の拡張が行われており、例えばRelease 12 LTEでは、時間方向で上り下りの通信を分けるTDD (Time Division Duplex)方式と、周波数方向で上り下りの通信を分けるFDD (Frequency Division Duplex)方式をあわせたキャリアアグリゲーションといった、周波数と時間領域の異なる使い方をするコンポーネントキャリアのキャリアアグリゲーションを仕様化しています。
他にも、キャリアアグリゲーションの関連技術として、同じくRelease 12 LTEにおいて、異なる基地局 (evolved Node B)間のコンポーネントキャリアを束ねる“デュアルコネクティビティー”技術が仕様化されています。デュアルコネクティビティーとは、図に示すように、基地局間インタフェースとしてX2インタフェースなどを活用した基地局間制御技術になっています。

これらのキャリアアグリゲーション関連技術の仕様化により、複数のコンポーネントキャリアを使った通信速度の高速化だけでなく、柔軟な運用実現を見据えた技術拡張も進めています。