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あるある事例

 ある会社の製造部長A氏は、表敬訪問した加工業者のX社の社長B氏との会話から、X社の品質を注意して見ておく必要があると思った。その理由は、B氏が語った一言に不安を感じたからだ。その一言とは、「我が社は、品質マネジメントシステムを運用しているので、品質管理は万全です」というものだった。

 B氏はそう言いながら、さまざまな帳票類や基準類の束を見せてくれた。確かに、仕組みそのものはよく考えられていた。仕組みが適切に機能していれば、かなり安心して加工を委託できるだろうとA氏も思った。

 しかし、A氏は「品質マネジメントシステムの仕組みがあるから品質は良い」というB氏の言葉を鵜呑みにしなかった。A氏が工程を視察した時に、各生産工程で作業者に「作業上のポイントは何か?」という問い掛けを行ったにも関わらず、誰も適切な答えを返せなかったからだ。それ故にA氏は、B氏にとって自慢の品質マネジメントシステムが、形式的なものになっているのではないかと危惧したのだった。

 A氏は部下に対し「X社に注意せよ」と指示を出した。部下も早急に工程監査に乗り込もうと準備を始めた矢先のことだ。X社からの納入品で大きな品質問題が発生してしまった。A氏は「ひょっとすると、A社は品質マネジメントシステムの監査の時期ではないか?」と直感した。すぐに部下に調べさせたところ、予想は的中した。監査対応に主要メンバーがかかりっきりで、工程の品質に対する監視がおろそかになっていたのだった。

 「多忙故に」という言い訳だったが、問題の根っこは別のところにあった。A氏が不安を覚えた通り、各工程で品質を確保するために、何を注意しなければいけないのか、何が作業上のポイントなのか、ということが十分に議論されていなかった。加えて、生産工程の作業者に対しても、そうした指導をされていなかったことが大きな原因だった。平常時は現場のリーダーが目を光らせて生産現場で発生したトラブルにその都度対応していたが、多忙になったときにトラブルの対応が手薄になり、その結果、不具合品が出荷されてしまったのだ。