アスリートの「フルタイム化」で増す支援の重要性

 デュアルキャリアの重要性が増しているのは、アスリートの「フルタイム化」に要因がある――。こう指摘したのは、同日のイベントで「アスリートのキャリアに関わる国の政策的動向」と題した講演をした、日本スポーツ振興センター 情報・国際部長の和久貴洋氏である。

 今、世界のトップスポーツではプロ化の進展によって競争が極めて高度化していると同時に、1位~3位までの差はごくわずかになっている。このため、アスリートは24時間競技に専念して高度なトレーニングに励むことが求められる。「だからこそ、早期からデュアルキャリアを支援することが以前より重要になっている」(和久氏)。

トップスポーツにおける国際競争の高度化(図:JSC)
トップスポーツにおける国際競争の高度化(図:JSC)
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 デュアルキャリアという概念はEU(欧州連合)で生まれ、これまで施策が進められてきた。「デュアルキャリアをきちんと構築しておけば、セカンドキャリアがうまくいくという考えがあるからだ」(同)。デュアルキャリアの対象となる期間は、一般に10代半ばから30代前半までと極めて長い。さらに、競技力の向上のみならず、精神性や社会性の発達、学力向上や職業開発、財政基盤の確立などに影響を及ぼす、人生にとって重要な時期であるためだ。

 デュアルキャリアの形成には多様な要素が求められるため、スポーツ界だけでなく、教育界、経済界、行政など多くの組織の連携が不可欠で、それが「スポーツキャリアサポートコンソーシアム」創設の意義だとした。

 なお、和久氏が所属する情報・国際部は、日本のトップアスリートが世界で勝つために、世界では何をやっているのか情報を集めて分析をしている。同氏によると、世界の競技力向上に向けた取り組みは、ほぼ共通している。主に3つの柱がある。

 1.施策推進の一元化(競技力向上のための統括組織を設置)、2.選択と集中(統括組織がどの競技、どの選手を強化するかを決定)、3.競技力向上のための基盤インフラとなるプログラム(強化拠点の整備、タレント発掘、コーチングの高度化、用具開発など7項目)。デュアルキャリアの支援は、「3」に含まれている。これが競技力向上のための「世界標準」であり、日本の取り組みも同様だという。

世界の国際競技力向上施策のフレームワーク(図:JSC)
世界の国際競技力向上施策のフレームワーク(図:JSC)
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 では、どこで国際競争をしているのか。上記の要素を“システム”として捉えたときに、他国より早く実践するか、もしくは他国がやっていないことを取り入れるなどしてイノベーションを起こすことだという。