ビッグデータは現実空間を豊かにする

―― オリンピックやワールドカップなどのメガスポーツイベントでは、これまでもパブリックビューイングが実施されています。それとは違うのですか。

葦原 従来のパブリックビューイングは、ほとんどが試合の中継映像を大型スクリーンに映し出すだけでした。それでは、臨場感に欠ける部分があります。

 例えば、音や光、振動、選手とのコミュニケーションといった試合会場でしか味わえない楽しみを提供する「リアルパブリックビューイング」を実現できれば、これまでの観戦方法とは一味違う新たなスタイルを確立できる可能性があると思うのです。

 ファンとしては現地に行くよりも少ない負担で現地と同等、あるいは異なる体験を得られますし、コンテンツホルダー側も新たな収益源を獲得できる。成功事例が登場すれば、一気にマーケットが広がると考えています

スポーツを「観る」における変化
スポーツを「観る」における変化
(図:葦原 一正氏が作成/日経BP社『スポーツビジネスの未来 2018-2027』より)
※ Bリーグは、2018年1月14日に熊本で行われたオールスター戦を東京・恵比寿で同時中継する「次世代型ライブビューイング B.LIVE in TOKYO」を開催した。当日の様子については「「ライブビューイング」ITでエンタメ化 Bリーグ新たな挑戦」を参照。

―― なるほど。現地観戦では、スマホアプリの活用が今も広がっていますね。

葦原 現在のスマホアプリは、席への誘導や飲食の購入など、試合会場での利便性を高めるサービスの提供が主流です。あくまでスポーツの副次的な楽しみをサポートするサービスにとどまっていて、わざわざダウンロードして観戦中に操作する理由が希薄になりがちではないかと感じています。これからは、現地観戦で「応援する楽しさ」を向上するアプリが増えていくのではないでしょうか。適度かつ受動的に情報を提供してくれる“目玉のおやじ”的なアプリの方がファンには好まれるかもしれません。

―― 「観る」についてもう一つ挙げていた、顧客データの分析によって、どのように観戦スタイルが変わっていくのでしょうか。

葦原 例えば、チケットを販売する際に、購入する観戦者と趣味や嗜好が近い人が集まるエリアをリコメンドするようなサービスが考えられます。特定の選手が好きなファンが同じエリアに集まれば、その選手が活躍した際に同じタイミングで盛り上がることができますし、ファン同士のコミュニケーションも活性化するでしょう。つまり、顧客データは単なるマーケティングツールではなく、スタジアムやアリーナで過ごす時間を豊かに、楽しくするためにも使われるようになっていくわけです。

 先ほど挙げたチケットレスや公式セカンダリーの取り組みは、豊かで楽しい空間を提供するためのデータを集める仕組みとして欠かせません。ライブイベントに関わる人々の利便性や楽しみを向上させ、同時にマーケティング効果を高めることも図っていく。その意味でも、データ活用はリーグやチームのビジネスで大きな役割を果たすようになっていくでしょう。