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 以前、本コラムで「滞留資産を廃棄すると利益は減るが、利益が出ている時に廃棄をすると逆にお金は増える」と述べた。滞留資産の廃棄によって利益は減るものの、利益が減った分だけ支払う税金も減るので、その分のお金が増えるからである。しかし、経営を進める上で一番重要なのは、キャッシュフローだ。そのためには、誤った利益の出し方をしては具合が悪い。

 確かに利益を出すことは、お金を増やす上で最も重要なことに違いない。しかし、上述のように廃棄すればお金が増えるにもかかわらず、利益が減ることを嫌って使いもしない滞留資産をそのまま保管するというのは、キャッシュフローという視点からは“誤った判断”と言わざるを得ない。お金のことを理解せずに、“利益だけ出せば良い”といった経営を押し進めると、下手をすると倒産の危機に陥りかねない。そういう意味で、間違った利益の出し方だけはしないようにしたい。

利益は上がっているのにお金が減る?

 では、利益が上がっているのにお金が減るのはどういう時だろうか。

 例えば、売れないのにどんどん生産して在庫を積み増すとどうなるだろうか。その場合、製造原価の総額は増えるが、大量に生産することで1個当たりの固定費は下がる。売上原価は、その期の売上高に関係した分の原価であり、製造原価の増分は棚卸資産(在庫)として残るだけで1個当たりの固定費が下がった分だけ売上原価も下がる。従って、仮に売上高が前期と変わらなくても売上原価の減少分だけ利益は増えるのだ()。

図 在庫積み増しによる利益変動の例
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図 在庫積み増しによる利益変動の例
3期とも売上高は9000個、売価は200円/個で同じ。製造費用の中で材料費などの変動費は1個30円、販売などの変動費は5円/1個である。製造費の中の人件費や減価償却費、経費などの固定費は120万円、販管費の固定費は35万円で3期とも同じである。棚卸資産の評価は先入先出法とした場合の損益を見ると、第2期に在庫を積み増したことで見かけ上の利益は大きく増えた。しかし、第3期は第2期の在庫をさばくために生産量を大きく下げたので、大幅な赤字となっている。(出展:高橋功吉、『ものづくり経営入門』、日経BP、p.82)